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アミロイドニューロパチー(家族性アミロイドポリニューロパチー)
手足の神経(末梢神経)や自律神経にアミロイド(異常なタンパク質)が沈着する病気
7人の医師がチェック 158回の改訂 最終更新: 2018.10.01

Beta アミロイドニューロパチー(家族性アミロイドポリニューロパチー)のQ&A

    家族性アミロイドポリニューロパチーとはどのような病気ですか。

    アミロイドと呼ばれるタンパクが神経節を含む末梢神経、自律神経系や他の組織に沈着することで様々な臓器に障害が出る遺伝性の病気です。日本とスウェーデンに多く、日本では長野県と熊本県で集積地が知られています。

    家族性アミロイドポリニューロパチーの原因、メカニズムについて教えて下さい。

    遺伝的に変異を起こしたトランスサイレチンや、ゲルソリンといったタンパクがアミロイドの前駆タンパクとなります。殆どの方はトランスサイレチンに異常があり、遺伝子診断も行われています。

    家族性アミロイドポリニューロパチーは、どのくらいの頻度で起こる病気ですか?

    わが国の遺伝性ニューロパチーではシャルコー・マリー・トゥース病に次いで2番目に多い病気です。かつては集積地でみられる非常に稀な病気だと考えられていましたが、遺伝子診断技術の発達とともに、集積地との関連が見られない高齢発症の患者さんがいることが分かったため、それなりによくみられる病気ではないかと考えられています。

    家族性アミロイドポリニューロパチーと全身性アミロイドーシスの違いについて教えて下さい。

    全身性アミロイドーシスとは、アミロイドが全身臓器に沈着する病気で、家族性アミロイドポリニューロパチーはその1つとなります。他に免疫グロブリン性アミロイドーシス(原発性、骨髄腫に伴うもの)や反応性AAアミロイドーシス(関節リウマチなどに伴うもの)があります。

    家族性アミロイドポリニューロパチーは、遺伝する病気ですか?

    常染色体優性遺伝という遺伝形式をとります。患者さんの子供は50%の確率でこの病気を発症します。一人患者さんが見つかると、その家系内で他にたくさんの患者さんが見つかります。治療法がある病気なので、十分な遺伝カウンセリングの上、遺伝子検査などを血縁の方々に行う必要があります。

    家族性アミロイドポリニューロパチーは、どんな症状で発症するのですか?

    症状は末梢神経障害、自律神経障害、臓器障害の3つに大きく分類することが出来ます。多発神経炎による下肢の感覚障害が最初に見られる症状として最も多いですが、そのほかにも自律神経障害による下痢などの消化器症状、起立生低血圧(立ちくらみ)による失神、また男性では勃起不全もみられます。

    家族性アミロイドポリニューロパチーの感覚障害の特徴について教えて下さい。

    感覚障害は通常左右対称性で足先と手先から起こります。感覚障害はしびれや温痛覚障害(熱い/冷たい感じが分からない、痛みがわからない)が主体で、触覚や深部感覚の障害は軽いですが、症状が進行していくにつれて全感覚が障害されます。

    家族性アミロイドポリニューロパチーでは感覚神経以外も障害されますか?

    感覚神経の障害から数年遅れて、運動神経も障害されるようになります。その結果、筋力低下や筋肉のやせなどの症状が見られます。

    自律神経障害は初期からみられます。最も特徴的な症状は下痢です。嘔気、嘔吐もしばしば起こります。

    また、起立性低血圧は、立ちくらみとして症状が表れますが、重度になってくると失神するようになります。また、房室ブロックと呼ばれる不整脈がみられることもあり、失神や、さらには突然死を来たすことがあります。

    家族性アミロイドポリニューロパチーでは、その他の臓器にも症状はみられますか?

    目に症状が見られることがあります。緑内障をきたして視力が失われることもあります。

    家族性アミロイドポリニューロパチーの検査にはどのようなものがありますか?

    血液検査では特に異常はありません。髄液検査ではタンパクの軽度上昇がみられることがあります。神経伝導検査という検査で、神経を皮膚の上から電気刺激してその反応を見る検査を行い、末梢神経がどのように障害されているかを調べます。

    家族性アミロイドポリニューロパチーの診断確定のための検査について教えて下さい。

    診断を確定するには、組織を実際にとってきて(生検)、アミロイドが溜まっているかを調べます。生検の場所としては神経、筋肉、皮膚、脂肪、胃・十二指腸、直腸などです。生検した場所にたまたまアミロイドがないこともあるので、診断が難しいことがあります。

    家族性アミロイドポリニューロパチーの遺伝子検査について教えて下さい。

    この病気は主にトランスサイレチンという遺伝子の異常によって起こります。そのため、その部分の遺伝子の配列を調べて変異がないか調べる遺伝子検査が行われます。生検では診断がつかず、遺伝子検査で初めて診断がつく患者さんはたくさんいらっしゃいます。 もちろん、遺伝子検査の前には遺伝カウンセリングを受け、どのような意義を持つ検査か十分納得して頂く必要があります。

    家族性アミロイドポリニューロパチーと診断が紛らわしい病気はありますか?

    成人になってから発症する末梢神経障害ということで、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)という病気と誤診されていることが非常に多いです。ただし、この病気では末梢神経障害のパターンが違うこと、自律神経障害が目立たないことなどから区別できます。中には非常に紛らわしいこともあるので、遺伝子診断が決め手に成ることも有ります。

    家族性アミロイドポリニューロパチーの治療法について教えて下さい。

    各症状に対して対処する対症療法がかつては主体でしたが、根本的な治療方法が現在開発されてきています。代表的なものは肝移植で、1990年にスウェーデンで始まり、現在は世界各地で標準治療となっています。変異トランスサイレチンの殆どが肝臓で作られるために開発されました。その他に、アミロイドの形成を阻害するタフィミジス<ビンダゲル(R)>という薬剤が臨床応用されています。肝移植が行える人は限られているので、この内服薬が広く使われています。肝移植とビンダゲル内服を組み合わせることも効果的です。

    家族性アミロイドポリニューロパチーの薬は、生涯飲み続けることになるのですか?

    ビンダゲルの内服は生涯必要となります。しかし、眼や脳で産生される変異トランスサイレチンは抑えることが出来ないので、眼の症状は進んでいきます。特に緑内障は視力低下を招く非常に重篤なものですが、緑内障を防ぐことはできません。また脳で産生されるアミロイドが血管壁にたまり、アミロイドアンギオパチーを引き起こすことも知られています。こちらも防ぐ手立ては今のところありません。

    家族性アミロイドポリニューロパチーでは入院が必要ですか?

    重症度によって入院が必要かどうかは決まると思います。重篤な症状がある場合にはその症状に対する治療を行うと同時に、本当にこの病気かどうか神経伝導検査や遺伝子検査などを行っていきます。非常に軽症な場合、例えば家族にこの病気があってその人自身には症状があるかないか分からないレベルの時には、外来で同意の上、遺伝子検査など行えばそれで足りるかと思います。

    家族性アミロイドポリニューロパチーに関して、日常生活で気をつけるべき点について教えて下さい。

    気をつけるべき症状は、失神です。失神は起立性低血圧によるもの、不整脈によるものが挙げられます。突然死につながりかねない症状ですから、心臓については十分調べておき、必要な治療を行う必要があります。また、眼の症状も失明につながりかねないものです。視力低下や視野障害などあるようならすぐに眼科にかかる必要があります。

    家族性アミロイドポリニューロパチーは、完治する病気ですか?あるいは、治っても後遺症の残る病気ですか?

    かつては吸収不良による低栄養などで予後は良くない病気でした。しかし、現在は肝移植やタフィミジスなど、根治的な治療法が開発されてきているおかげで、病気の経過は改善されてきています。ただし、上で述べたように一部の症状に対しては改善効果を持たないために、注意深く経過を見ていく必要があります。