脊椎骨折の基礎知識
POINT 脊椎骨折とは
脊椎は背骨のことです。脊椎位骨折の一種類として高齢者の脊椎圧迫骨折がよく知られています。脊椎の中には神経(脊髄)があり、骨折の影響が脊髄に及ぶと、手足のしびれや運動麻痺が起こります。画像診断(レントゲン検査やCT検査、MRI検査)によって骨折の状態や脊椎損傷の有無・程度を調べます。骨折の程度や神経への影響や身体の状態などから、手術もしくは保存療法(症状を和らげながら回復を待つ方法)のどちらかが選ばれます。予防にはできるだけ骨に負担がかからないような姿勢をとったり、転倒を予防したりすることが効果的です。脊椎骨折は整形外科で診療が行われます。
脊椎骨折について
脊椎骨折の症状
- 骨折の痛みによる症状
- 痛みにより、動いたり体を起こしづらくなる
- 活動性が低下して、筋力低下などにつながる
- 骨折直後だけでなく、
慢性的 な腰や背中の痛み(腰背部痛)の原因となる
- 痛みにより、動いたり体を起こしづらくなる
脊髄 や神経が損傷された場合の症状- 運動
麻痺 :運動障害が起こり、動かせる場所が限られたり、十分に力が発揮できなくなったりする - 感覚障害:手足のしびれ、感覚が鈍くなる
- 排尿、
排便障害 自律神経 障害:血圧や体温が一定に保たれなくなる
- 運動
脊椎骨折の検査・診断
- 画像検査
レントゲン 検査:骨折がないかを調べる- まず最初に行う検査
CT 検査:レントゲンで分からないような骨折がないかを調べる- もしくは手術の方式を決定するために撮影する
MRI 検査:CT検査でも分からない骨折や、背骨 のなかを走る脊髄 のダメージがないか調べる
- 骨折だけでなく脊髄損傷による症状がないかを確認することも重要
脊椎骨折の治療法
- 主な治療法
保存療法 :首や腰などの専用装具を使って安静にする- 薬物療法
NSAIDs :痛み止め- アセトアミノフェン:痛み止め
- カルシトニン:骨の吸収を抑える
ホルモン で、骨粗しょう症がある場合に悪化を防ぐため使うことがある
- 手術
脊椎 固定術:脊椎をプレート固定で固定する- セメント固定術:つぶれた脊椎を固めて、もとの形に戻す
- 骨折を治す目的ではなく、骨折によって
脊髄 が傷つくことを防ぐために行われる
- リハビリテーション
- 活動量をできるだけ落とさずに、筋力や関節の動きを回復させる
- 日常生活の動きを練習する
- 予防
- 骨折した骨に負担をかけないような姿勢、動き方をすることで再発を防ぐことができる
- 手術で悪化を防ぐことができる
- 長期的な経過
- 脊髄神経は一度働きが落ちると回復することは難しい
- 骨折した骨は元の状態に戻ることは難しい
脊椎骨折に関連する治療薬
非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs)(内服薬・坐剤・注射剤)
- 体内で炎症などを引きおこす体内物質プロスタグランジンの生成を抑え、炎症や痛みなどを抑え、熱を下げる薬
- 体内で炎症や痛み、熱などを引き起こす物質にプロスタグランジン(PG)がある
- PGは体内でCOXという酵素などの働きによって生成される
- 本剤はCOXを阻害することでPGの生成を抑え、痛みや炎症、熱などを抑える作用をあらわす
- 薬剤によっては喘息患者へ使用できない場合がある
- COX阻害作用により体内の気管支収縮を引きおこす物質が多くなる場合がある
- 気管支収縮がおきやすくなることよって喘息発作がおこる可能性がある
脊椎骨折の経過と病院探しのポイント
脊椎骨折が心配な方
脊椎骨折の中で最も有名なのは脊椎圧迫骨折です。骨粗しょう症で骨がもろくなっていると、尻もちなどの軽い衝撃で知らぬ間に骨折が生じていることがあります。「脊椎骨折」という場合には、この圧迫骨折を含めた脊椎(背骨)のあらゆる骨折のことを指します。
転んだりぶつけたりしてから背中が痛く脊椎骨折がご心配な方は整形外科クリニックの受診をまずはお勧めします。脊椎骨折の診断には、レントゲン検査・CT検査・MRIといった画像検査が実施されます。痛みがあるところと合わせてレントゲンで診断することも多くありますが、昔からあるものではなく新たな圧迫骨折があるかどうかをはっきり診断するためにはMRIが必要です。多くのクリニックなどではMRI検査がないので症状と合わせてレントゲン検査を用いて診断することがほとんどです。
脊椎骨折でお困りの方
基本的には、コルセットなどの専用装具を使って、ベッド上で安静にして、骨が形成されるのを待つ保存療法が主体となります。通常では、3-4週で骨が形成され、痛みが治まってきます。痛みがある間は痛み止めを服用します。
脊椎骨折の中でも、骨の破片が脊髄神経を圧迫しているような場合では、緊急手術が必要となることがあります。その他にも、骨折部の変形が悪化する可能性があったり、時間が十分にたっても痛みが改善しなかったりする場合に手術が検討されます脊椎をプレート固定で固定する手術や、つぶれた脊椎にセメントを入れて、もとの形に戻す手術を行います。骨粗しょう症が原因で骨折を起こした場合は、骨粗しょう症の悪化を防いで骨を強くする薬を服用することもあります。
また、骨折した骨が元の状態に戻ることは難しいため、長期的にリハビリが必要になります。痛みがよくなるにつれ、徐々に活動範囲を広げ、安定して自宅での生活が行えることを目標にリハビリを行います。長期的なリハビリが必要となるため、急性期病院に入院している場合は、回復期病院に転院することになるでしょう。
患者さん一人あたりのスタッフ数や、リハビリ設備(リハビリ室や器具)の充実度といったところが病院を選ぶ上で参考になります。リハビリの回数が1日1回なのか、それとも午前と午後で2回あるのか、土日もリハビリをやっているかといった点は、慢性期の病院を探す上でのポイントとなります。自宅復帰後は転倒しないように気をつけることだけでなく、自宅内を転びにくい環境にすることも重要です。