きゅうせいこうとうがいえん
急性喉頭蓋炎
感染などが原因で、のどの奥にある喉頭蓋(こうとうがい)という部分が腫れ上がり、窒息の危険がある病気
21人の医師がチェック 117回の改訂 最終更新: 2022.02.25

急性喉頭蓋炎の基礎知識

POINT 急性喉頭蓋炎とは

のどの奥にある喉頭蓋が腫れて窒息を起こしうる病気です。喉頭蓋は空気の通り道にあるため、腫れると呼吸が苦しくなります。症状は発熱と激しいのどの痛みで、食べ物だけでなく、つばも飲み込めなくなります。くぐもったような声になり、悪化すると空気を吸う時にヒューヒュー音がし、呼吸が苦しくなります。診断は鼻からのどに細いカメラを入れたり、喉のCT検査で行います。呼吸が苦しくなってから窒息までは短時間で起こるため、呼吸経路の確保が最重要です。口から気管に管をいれる気管挿管や、気管を切って管をいれる気管切開などを行い、細菌感染に対して抗菌薬の治療を行います。進行が早いため、症状がでたら早期に耳鼻咽喉科のある総合病院を受診してください。つばが飲みこめないほどの人や、呼吸が苦しい人は救急車での受診もためらわないで構いません。

急性喉頭蓋炎について

  • 感染などが原因でのどの奥にある「喉頭蓋(こうとうがい)」という部分に炎症が起きた状態
    • 喉頭蓋が腫れ上がり、空気の通り道(気道)が狭くなる
    • 進行がきわめて速く気道が完全にふさがることもあるため、治療を急ぐ
    • 小児において無治療では6%が死亡する
  • 細菌感染が主な原因
    • b型インフルエンザ桿菌がほとんど
      • ヒブワクチンの普及によってインフルエンザ桿菌による急性喉頭蓋炎は減ってきている
    • それ以外の原因には、黄色ブドウ球菌肺炎球菌、EBウイルスカンジダなどがある
  • 2-7歳の小児に多い
  • 男女差、季節性はない

急性喉頭蓋炎の症状

  • 主な症状
    • 突然の発熱と激しいのどの痛み
    • のどの痛みは非常に強く、特につばや食べ物を飲み込もうとする際に強くなる
    • 前傾姿勢の方が呼吸が楽になるので、自然と前かがみになることが多い
    • のどぼとけの上方を押すと痛みがある
    • 特徴的な話し方
      • くぐもった声になる
    • 空気を吸う際にヒューヒュー音がする
  • 重症化した場合の症状
    • 痛みのために唾液が飲み込めなくなり、口から垂れ流しになる
    • 気道が狭くなることにより、呼吸困難の症状が出現する
      • 肋骨の間や一番下の肋骨の下方、鎖骨の間などがべこべこへこむような呼吸(陥没呼吸)
      • 意識障害
      • チアノーゼ
  • 咳や鼻水はほとんど出ない

急性喉頭蓋炎の検査・診断

  • 経過や症状から診断する
    • 数時間から1日以内に急激に症状が悪化する場合には、この病気である可能性が高くなる
  • 検査は参考にはなるが、進行が速いため検査よりも治療を優先する
  • 口から喉頭蓋を無理に観察しようとすると、窒息の危険を高めることがあるので、急性喉頭蓋炎が強く疑われる時には行われない
  • 画像検査
    • レントゲンX線)検査
      • 喉頭蓋の腫れが起こっていないかを調べる
    • CT検査
      • レントゲンよりも精度高く喉頭蓋周辺の様子を確認できる
      • 診断だけでなく、よく似た他の病気(咽頭膿瘍など)を見つけるためにも有用である
    • 喉頭ファイバー検査:のどに炎症が起こっていないかを詳しく調べる
      • 胃カメラよりも細いカメラを鼻や口から入れて、のどの奥を観察する
      • すぐに行える医療機関は限られている
      • 窒息の危険が差し迫っている場合には、この検査よりも気道確保を優先すべきである
  • 血液検査
    • 炎症の値が上昇していることが多い
  • 培養検査:のど・血液中の細菌の検査

急性喉頭蓋炎の治療法

  • 気道を確保して、窒息しないようにすることが最優先
    • 気管挿管:口から管を入れ、人工呼吸器で呼吸を手助けする
    • 輪状甲状靭帯切開:のどの一部を切って管を入れる(小児ではあまり行われない)
    • 負担の大きい治療ではあるため、呼吸状態に余裕がある場合には行わずに慎重に様子をみることもある
  • 急激に悪化するため、入院ですぐに対応できるようにする必要がある
    • 抗生物質点滴(セフトリアキソン、アンピシリン・スルバクタムなど)
    • アドレナリン吸入
    • ステロイド点滴
  • 2日から3日で挿管など人工呼吸が必要な期間は終わり、約1週間で完全に症状がなくなる
  • 姿勢の工夫
    • 頭の位置が下がると窒息のリスクが増すため、座った姿勢や縦向きに寝かせることが多い
  • Hibワクチンの定期接種を受けることで予防効果が期待できる

急性喉頭蓋炎の経過と病院探しのポイント

急性喉頭蓋炎が心配な方

急性喉頭蓋炎では、のどの極めて強い痛みが特徴的です。炎症が進行すると唾液を飲み込もうとする際の痛みが我慢できず、唾液を一切飲まずに外に出し続けてしまうほどになります。

進行が早く、痛みが強くなってから早ければ半日、そうでなくとも数日以内に急激にのどが腫れてしまい、呼吸に支障をきたすため緊急入院が必要となります。そのまま放置すると、のどが詰まって窒息死につながる深刻な病気です。もし急性喉頭蓋炎が疑わしいのであれば、早期に救急外来を受診する必要があります。呼吸が苦しければ救急車で受診すべき病気です。

夜間や土日祝日に病院を受診する際には注意が必要です。救急科が24時間受付をしていたとしても、耳鼻科や救急科の医師が常に院内に常駐しているとは限りません。専門外の医師だけでは診断や治療が難しいことも多いです。

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急性喉頭蓋炎でお困りの方

急性喉頭蓋炎については、診断がつき次第その場で緊急入院となって、直ちに抗生物質(抗菌薬)やステロイドなどの治療が開始されます。命に関わる病気ですので、どこでどのような治療を受けるかを迷う余地はほぼありません。

本当に重症の場合には、のどを切開して呼吸できるよう応急処置を行うこともあります。救急医が緊急で行う場合と、少し時間に余裕があるのであれば、手術室に移動して耳鼻科医が行う場合があります。

いずれにせよ、入院の上で、ICU (intensive care unit), HCU (high care unit) などと呼ばれるような集中治療室で経過をしっかりとみるような重大な病気です。設備の整っていない小さな医療機関では対応が難しい病気の一つです。

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