自閉スペクトラム症の治療:療育、ソーシャルスキルトレーニング
自閉スペクトラム症の主な治療は、周りの人の支援や行動療法です。これらを通じて生きやすい環境を作ることができます。症状は多様であり、また成長する過程で変化もあります。そのため、その人の状態を周りが理解し、柔軟に支援を続けていくことが大切です。
1. 自閉スペクトラム症に対する療育とソーシャルスキルトレーニングについて
同じように、社会生活に適応することを目指す「ソーシャルスキルトレーニング」という方法もあります。ソーシャルスキルトレーニングは、言葉の遅れが目立たない場合(アスペルガー症候群)や、自閉症を持った人が療育を経て基本的なコミュニケーション能力を獲得した場合に行われます。生活習慣や対人関係を良くする方法を学び、社会生活を円滑に営む技術を習得していきます。
2. 療育の方法について

療育の基本は「指示する」→「実行する」→「ほめる」というサイクルです。教える人(セラピストなど)が子どもに指示を出し、子どもがそれを実行します。上手くいくとセラピストなどがほめます。
療育においては、指示の方法や、実行の手助けをする判断・方法、ほめる方法に工夫が散りばめられています。指示をわかりやすくするために、イラストや図が役に立つ場合もあります。自閉スペクトラム症の子どもは「ほめられる」ということの意味が分からないこともあるので、食べ物やおもちゃをご褒美としてあげることもあります。
子どもが何を出来て何を出来ないのか、出来ない原因は何なのか、出来るためにはどういう方法が有用なのかということを常に考えながら、よりよい療育の方法を模索していきます。
療育にはさまざまな方法があり、セラピストはそれらを組み合わせるなどの工夫して進めていきます。
【療育の方法の例】
- ABA(応用行動分析)
- 上手くできたときに褒めたりご褒美をあげたりすることで、社会生活に役立つスキルを学びやすくする方法です。細かい指示を使うDTT(不連続試行法)という方法を取る場合もあります。
- PECS(絵カード交換式コミュニケーションシステム)
- 絵カードを使って言葉のようなコミュニケーションをとる方法です。
同じ自閉スペクトラム症であっても、症状や発達の程度には個人差があります。また、一般的な教育においても学び方や教え方にさまざまな種類があるように、療育にも多くの方法があります。療育を行ううえでは、一人ひとりの子どもの症状と発達の度合いに合わせることが大切になります。その子にとって身近な目標を設定して、療育の方法を選び、実践をしていきます。
3. ソーシャルスキルトレーニング
「ソーシャルスキルトレーニング(SST)」は、社会に適応することを目的とした技術(スキル)が、何らかの点で妨げられている人のための訓練です。社会の中で生きていくために知っておいたほうがいいことを学び、周りと上手く協力する能力を身につける訓練を行います。
SSTで学ぶスキルには、順番を守る・挨拶をするといった基本的なことから、職場での立ち居振る舞い方など応用的なものまで幅広くあります。こうしたスキルを自ら模索し、他者からフィードバックを受けながら学び会得していきます。
なお、トレーニングは基本的に言語による指示、応答によって行われるため、言語コミュニケーション能力を獲得している必要があります。
自閉症
参考文献
・特定非営利活動法人アスペ・エルデの会, 発達障害児者支援とアセスメントに関する
・Maglione MA, Nonmedical interventions for children with ASD: recommended guidelines and further research needs. Pediatrics. 2012;130 Suppl 2:S169.