[医師監修・作成]自閉スペクトラム症で知っておくとよいこと:抱きがちな悩み、声かけの工夫、長所など | MEDLEY(メドレー)
じへいすぺとらむしょう(じへいしょう、あすぺるがーしょうこうぐん、こうはんせいはったつしょうがい)
自閉スペクトラム症(自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害)
社会性やコミュニケーションに関連する脳の働きに、発達段階で障害がでること
19人の医師がチェック 257回の改訂 最終更新: 2022.04.08

自閉スペクトラム症で知っておくとよいこと:抱きがちな悩み、声かけの工夫、長所など

自閉スペクトラム症の症状の重さは人によってさまざまです。生活に支障があるほど重い人もいれば、そうでない人もいます。また、軽度であっても成長にしたがってコミュニケーションの悩みが顕在化してくる人もいます。その一方で、自閉スペクトラム症の特徴を持ちながらも自分の長所を活かし、うまく社会生活を送れている人もいます。ここでは、自閉スペクトラム症の人やその周りの人が、よりよく暮らしていくために知っておくと良いことをまとめました。

1. 子どもが自閉スペクトラム症かもしれないと思ったら:二次障害を防ぐためにできること

自閉スペクトラム症の子どもは、その特徴から問題を抱えがちです。「相手の欠点を平然と言う」「意思疎通がうまくいかない」といったことから集団生活に馴染めず、いじめに遭ったりすることもあるようです。このような経験が不安や自尊心の低下を引き起こし、うつ病や不安障害といった病気につながってしまうことがあります。これを「二次障害」と言います。

二次障害を防ぐためには、自閉スペクトラム症の子どもが抱える困難に周囲が気づき、なるべく早くから適切にサポートしていくことが必要になります。

しかし、子どもの様子から「自閉スペクトラム症かもしれない」という考えが頭に浮かんでも、診断がつくのが怖くて受診を尻込みをしてしまったり、ひとりで悩みを抱えてしまうかもしれません。重要なのは、診断そのものではなく、その子の困りごとを明確にして、適切なサポートを考えていくことなのです。

お子さんに、症状のページにあるような特徴や、何か気になる様子があったりしたら、地域の発達相談センターや小児科などに相談をしてみてください。

2. 自閉スペクトラム症の人によくある困りごとと対策

自閉スペクトラム症は程度によっては、本人の努力で大きな問題につながらずに済む場合もあります。一方で、周りの人の手助けが必要になる場合も少なくありません。自閉スペクトラム症の人とコミュニケーションをとる時のコツについて説明します。

言葉以外のコミュニケーションが苦手

自閉スペクトラム症の人は、表情やジェスチャー、声のトーンといった、言葉以外の意思疎通手段(非言語的コミュニケーション)が苦手です。相手が喜んでいるのか怒っているのかを雰囲気から判断できません。

また、慣用句、皮肉、お世辞などのように文字通りではない表現や曖昧な表現も理解しにくいです。そのため会話が噛み合わず、周囲の人とのズレが生まれてしまいます。

このようなズレを埋めるために、周りの人はできるだけ具体的な言葉で伝えるようにしてください。例えば「なんで廊下を走るの? ダメでしょ?」というより「走ると危ないよ。廊下は歩いてね。」のほうがわかりやすいです。

相手にストレートに言いにくい内容である場合、曖昧な表現を使いがちです。しかし、シンプルでハッキリとした言葉を使わなければ、自閉スペクトラム症の人とのコミュニケーションは円滑に運ばないかもしれません。伝えたいことは工夫して上手に伝えるようにしてください。

チーム内での人間関係をうまく作れない

自閉スペクトラム症の人にとって、人間関係を築いたり保ったりするのは簡単ではありません。学校や職場で他者との協力が求められる場面に置かれても、単独行動を好むように見えてしまい、トラブルの種になることが考えられます。本人に悪意があってやっているのではない、ということをまずは周りが理解し、手を差し伸べる姿勢が大切です。

曖昧な指示が苦手

自閉スペクトラム症の人は「あれ」「これ」といった代名詞が苦手です。また、「適当によろしく」「いい感じにやっといて」といったあいまいな指示は、誰であってもわかりにくいものですが、自閉スペクトラム症の人にとってはさらに理解が難しくなります。

やってほしい内容について、量、質、手順、期日を明確かつ具体的に指示してあげることが、作業や仕事をうまくこなすうえで大きな助けになります。

興味が限定されている

興味があることに対しては熱心になる一方で、興味を感じられないことに腰が重くなるのは誰にでもよくあることです。自閉スペクトラム症の人ではこの傾向がより強く現れてしまうので、興味の欠如によって仕事が著しく妨げられることになってしまいます。

誰にでも当てはまることですが、興味があることを仕事にし続けるのがうまくいきやすいと考えられます。仕事や役割を割り振る際には、本人の興味を考慮するとよりうまく進むと考えられます。

計画の急な変更に対応できない

いつも同じルールであることに強いこだわりがあると、小さな変化に対して苦痛を覚える場合があります。そのため、予定変更に対して柔軟に対処できないことがあるので、なるべく急な変更は避けてください。また変更が必要な際には、できるだけ早く伝えるといった配慮があるとよいと考えられます。

多くの種類の仕事を同時に進められない

狭い範囲に関心・行動が限定されることが多いので、複数のことを同時に進めるのが苦手な傾向があります。裏を返せば、特定のことに強い関心を持ち続けることができるとも考えられ、粘り強さが上手く作用すると優れた結果につながることがあります。複数の仕事を同時に進めるよりも、1つの仕事にじっくり取り組むほうが上手くいくかもしれないので、仕事をする際には、一つひとつこなして行く方法を試してみるとよいかもしれません。

3. 自閉スペクトラム症の特徴が活きる例

自閉スペクトラム症の特徴が有利に働く場合もあります。その人の特性を周りが理解しておくことが、得意な点を活かすことにもつながるかもしれません。

興味のある特定の分野で並外れた知識をもつ

自閉スペクトラム症の人は興味の幅が狭く限られている傾向があるのですが、その結果、特定の分野に人並み外れて熱中し、豊富な知識を身につけられることがあります。中には専門性の高い知識を仕事に活かせる人もいます。

決まった1つの仕事を真面目に行う

自閉スペクトラム症の人にはしばしば「決まった習慣にこだわり変化に抵抗する」といった特徴が見られます。異なった見方をすると、決められた手順で1つのことを続けるのに有利な特徴ともいえます。根気強く仕事に取り組むことで良い成果をあげることもあります。

4. 自閉スペクトラム症は治るのか

「自閉スペクトラム症は治るのか?」という質問に対して、一言で答えるのは難しいです。「自閉スペクトラム症を治せる画期的な治療薬はありません」というのが一つの答えとなりえますが、その意味するところは背景をふまえて考える必要があります。

自閉スペクトラム症の治療の目的は生活面での困りごとを改善すること

自閉スペクトラム症によって起こった問題に対し困っていて、医療者などの支援により改善につなげたいと考えた場合、自閉スペクトラム症を「病気」ととらえて「治療」を考えることになります。

具体的な治療の目的としては、社会的コミュニケーションの障害や限定された反復的な行動によって職業などの社会生活に生じる問題に対応し、自立した生活を送ることなどが考えられます。

自閉スペクトラム症の原因ははっきりとわかっていない

自閉スペクトラム症の特徴を解消するような治療法は見つかっていません。その意味で、「自閉スペクトラム症は治るのか?」という質問には「治らない」と答えざるをえない面があります。しかし、治療の結果として現れる生活への好影響を考えると、治るという可能性も完全に否定できないと考えられます。「治る」「治らない」という単純な結果を追い求めるのではなく、上手に社会生活を送るような工夫に考えを切り替えると良いかもしれません。

5. 自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害などの用語について

「自閉スペクトラム症」「自閉症」「アスペルガー症候群」などの用語について、歴史を交えながら説明します。精神科の用語は時代にともなって変化しているので、やや古い資料を読む際などには、用語の意味がどのような定義に基づいているかをそのつど確認する必要があります。

自閉スペクトラム症

「自閉スペクトラム症」は比較的新しい概念です。「スペクトラム」とは少しずつ違いのある多くの例が互いに明確な境界なく連続的に位置付けられる様子を指す言葉です。自閉症やアスペルガー症候群などの類似した概念を連続的にとらえようとする立場から、自閉症スペクトラム障害という名前が使われます。

自閉症

「自閉症」という概念は、1943年にアメリカの精神科医カナーが「情緒的接触の自閉的障害」を示す子どもについての論文を著し、そうした特徴のある子どもたちを「早期幼児自閉症」と呼んだことが始まりです。

報告された特徴は、のちの言葉でいう「自閉症」に相当すると考えられます。また、自閉症は言葉の発達の遅れを伴うとされ、言葉の障害がない場合は次に説明する「アスペルガー症候群」と呼ばれるようになりました。

アスペルガー症候群

「アスペルガー症候群」という概念は、1944年にオーストリアの小児科医アスペルガーによって「小児の自閉的精神病質」という論文が出されたことに由来します。1981年にイギリスの精神科医ウィングがアスペルガーの論文を再発見し、「アスペルガー症候群」という呼び名をつけたのです。

アスペルガー症候群は、言葉の発達の遅れがない点が「自閉症」とは違っていて、ほかの特徴は自閉症と類似しているとされます。

現代でもアスペルガー症候群という名前はまだ存続しています。精神科領域の用語の体系としてよく参照されるもののうち、世界保健機関(WHO)による「国際疾病分類第10版」(ICD-10)には「アスペルガー症候群」の項目が記されています。そして、ICD-10では、アスペルガー症候群は「小児自閉症」などとともに「広汎性発達障害」の一種と位置付けられています。

広汎性発達障害

広汎性発達障害は、ICD-10にある広い分類で、アスペルガー症候群を含みます。ほかに「小児自閉症」「非定型自閉症」などが広汎性発達障害に含まれます。

高機能自閉症

「高機能自閉症」という言葉は最近ではあまり使われなくなってきています。自閉症の特徴があり、知的障害を伴わない場合を指すことが多いです。

発達障害

日本の発達障害者支援法は、発達障害を「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と定義しています。

発達障害は通常、知的障害とは区別されます。ただし、発達障害に知的障害を伴う場合もあります。