じょくそう(とこずれ)
褥瘡(床ずれ)
布団やベッドなどと触れる部分の皮膚が、長い間圧迫されづづけることで血流が不足して、皮膚や筋肉などの組織が壊死すること
14人の医師がチェック 165回の改訂 最終更新: 2024.04.25

褥瘡(床ずれ)とはどのような病気か

褥瘡(じょくそう)は「床ずれ」とも呼ばれ、長時間の圧迫で血液の巡りが悪くなったことをきっかけにできる皮膚の傷のことです。ひどくなると皮膚が深くえぐれることもあります。このページでは褥瘡について、症状や原因、検査、治療などを幅広く説明します。

1. 褥瘡とは:定義や頻度

褥瘡

褥瘡は骨と皮膚の間にある軟部組織の血流が悪くなってできた傷です。同じ姿勢で長時間過ごすと、ベッドなどとの接触面に過度な負荷がかかり、褥瘡ができやすくなります。

褥瘡ができるメカニズムについて

褥瘡ができる過程をより詳しく説明します。

  • ①圧迫によって血流が悪くなる
  • ②圧迫が一定時間続くと、組織に回復し難い血流の障害が起こる
  • ③血流の障害が起きた部分の皮膚や軟部組織が傷つき始める

この状態が褥瘡です。はじめのうちは皮膚が赤くなったり、水ぶくれができたりしますが、進行すると皮膚がえぐれていきます(潰瘍化)。

長時間同じ姿勢でいると、身体を動かしたり姿勢を変えたくなってきます。多くの人は、このように自然に体重移動をしたり寝返りを打って、身体の同じ部位が圧迫され続けないようにしています。しかし、自分で身体をあまり動かせない人は、姿勢を変えられないために同じところが圧迫され続けて褥瘡ができてしまうのです。

また、低栄養の人や、筋肉が少ない人は褥瘡になりやすいことが知られています。痩せて出っ張った骨により皮膚が圧迫されやすくなるからです。

褥瘡になる人はどのくらいいるのか?

調査は多くはありませんが、2013年に日本褥瘡学会が入院している人に対して行った調査によると、約50人中1人に褥瘡があったとのことです。多いという印象を持った人もいるかもしれませんが、これは10年前の調査結果であり、現在は褥瘡を予防するためにさまざまな工夫が行われています。そのため、入院患者の中で褥瘡になる人の割合は年々少なくなってきていると考えられます。

2. 褥瘡(床ずれ)の症状

褥瘡の症状はできてすぐの時期と、できて数週間経った時期で異なります。

できてすぐの褥瘡の症状(急性期褥瘡)

褥瘡の初期症状は皮膚の赤みです。ただの赤みであれば圧迫をなくすことで消えますが、褥瘡による赤みであればしばらく時間が経っても消えることはありません。また、赤くなった部分を指で強く押して離した時に白く変化しないことも褥瘡の特徴で、褥瘡かどうか見分ける方法として用いられます。

このようなできたばかりの褥瘡を「急性期褥瘡」と呼びます。

【急性期褥瘡の症状について】

  • 皮膚が赤くなる(発赤
  • 皮膚が紫色になる(紫斑
  • 水ぶくれができる(水泡)
  • 皮膚がただれる(びらん
  • 皮膚が浅くえぐれる(浅い潰瘍)
  • 痛みがある(疼痛

このできたばかりの段階では、いったん症状が落ち着いて治ることもあります。しかし、このまま褥瘡が悪化すると、次のような慢性期褥瘡になります。

できてから時間が経った褥瘡の症状(慢性期褥瘡)

褥瘡ができて数週間経つと症状があまり変化しなくなり、「慢性期褥瘡」と呼ばれる状態になります。

【慢性期褥瘡】

  • 皮膚が深くえぐれる(潰瘍)
  • 皮膚がじゅくじゅくする(滲出液が出る)
  • 皮膚の一部が死んでしまう(壊死

できたばかりの段階では皮膚の色調が赤や紫色であったものが、黒く変化していったり、浅かった皮膚のえぐれの深さが増します。また、常にじゅくじゅくと湿った状態になります。

詳しい説明は「褥瘡(床ずれ)の症状」に書いてありますので、こちらも参考にしてください。

3. 褥瘡(床ずれ)の原因、できやすい人の特徴

褥瘡の直接的な原因は身体の同じ部分に圧力がかかり続けることです。圧迫された部分の血流が低下して褥瘡ができます。

さらに、次の要因にあてはまる人には褥瘡ができやすくなることが分かっています。

【褥瘡ができやすくなる人の特徴】

  • 全身の要因
    • 栄養状態が悪い
    • 痩せている
    • むくんでいる
    • 一部の薬
    • 病気や怪我で動けない
  • 皮膚の要因
    • 皮膚が薄い
    • 皮膚が乾燥する
    • 皮膚がこすれる
    • 皮膚が湿っている(尿失禁・便失禁・発汗など)
    • 皮膚の病気
  • 社会的な要因
    • 介護力の不足
    • 福祉制度、サービスへの情報不足
    • 経済力不足

■全身の要因

痩せていると骨が出っ張るため、褥瘡ができやすくなりますし、むくみがあると血流が悪くなったり、皮膚が弱くなるので、褥瘡ができやすくなります。また、脳梗塞脳出血脊髄損傷といった身体を自分で動かしにくくなる状況があると、姿勢を変えにくいため褥瘡ができやすくなります。

■皮膚の要因

皮膚が傷つきやすい状態も褥瘡につながります。汗や失禁で常に皮膚がふやけていたり、逆に乾燥したりすることなどが要因になります。

■社会的な要因

在宅で介護を受けている人では、介護をする人の不足、介護サービスの情報不足などから褥瘡ができやすい環境が作られやすいです。

褥瘡は一つの要因のみではなく、これらの要因がからみあって起こります。詳しい説明は「褥瘡(床ずれ)の原因」も参考にしてください。

4. 褥瘡(床ずれ)の検査

褥瘡の診断は診察で行われます。

深い褥瘡ができている場合には、褥瘡部分に綿棒やペンライトを入れて観察します。これは、褥瘡周りの皮膚の下にポケットと呼ばれる空間ができているかどうか、できている場合その深さはどのくらいかを測定するために行われます。ポケットは、見た目の傷の範囲よりも広い範囲に褥瘡が及んでいる状態ですので、見逃すわけにはいきません。表面から見えない深い部分の褥瘡を調べるために超音波検査が行われることもあります。

診察で見極めた褥瘡の重症度に合わせて治療が行われます。重症度を評価する指標にもさまざまなものがあり、米国とヨーロッパの褥瘡諮問委員会が作成したステージ分類と、日本褥瘡学会が作成したDESIGN-R(デザインR)が広く使われています。

詳しい説明は「褥瘡(床ずれ)の検査や分類など」に書いてありますので、参考にしてみてください。

5. 褥瘡(床ずれ)の治療

褥瘡の治療では、褥瘡の傷そのものの治療を行うと同時に、褥瘡になりやすい要因を改善することが重要です。

褥瘡への直接的な治療として、塗り薬、被覆材、外科的治療などがあります。褥瘡ができて数週間であれば、褥瘡になりやすい要因を改善しつつ、被覆材で保護することで、そのまま治ることもあります。しかしながら、時間が経過している場合は被覆材だけでは不十分で、塗り薬などが必要です。

褥瘡の治りやすさは深さによって異なります。浅い褥瘡は1か月程度で治りますが、深い褥瘡は治るのに数ヶ月かかります。深い褥瘡では、組織が大きく壊死してしまっているため、壊死部分をきれいに取り除きながら新しい組織ができやすいような環境を整える必要があります。壊死した部分を取り除くために外科的な処置(メスやハサミで切り取ったりする)が行われ、新しい組織ができやすいように塗り薬や被覆材を使います。

詳しくは「褥瘡(床ずれ)の治療」を参考にしてください。

6. 褥瘡(床ずれ)について気をつけてほしいこと:予防や自宅での処置の注意点

体位変換

褥瘡は予防が最も重要です。また、褥瘡が一度治った後でも再発しないようにすることが必要があります。自宅で介護している人にできる予防方法には次のものがあります。

【褥瘡の予防について】

  • 体位変換を行う
  • 身体の圧が一部分にかからないようにする:ベッドやクッションを適切に使用する
  • 栄養状態を改善する
  • スキンケアをする

褥瘡は一部分に圧がかかることが原因です。そのため、圧がかからないように一定時間で体位を変えることが推奨されています。また、一部分に圧がかからないように作られたベッドマットレスやクッションを使うことも有効です。

また褥瘡ができやすい全身的な要因としては、栄養状態が悪いことや、皮膚が乾燥したり湿ったりしていることがあります。そのため、栄養を補助したり、スキンケアをしたりすることも重要です。

自宅で介護をしている人にはここであげた内容を全てを行うのは難しいかもしれません。訪問看護や訪問介護の人とよく相談して、できる範囲のことに取り組んでみてください。また、介護の負担を軽くするために、福祉制度の利用も検討してみてください。自治体や担当のケアマネージャーさんと相談するとよいです。

詳しい説明は「褥瘡(床ずれ)に関して日頃から気をつけてほしいこと」を参考にしてみてください。

参考:褥瘡診療ガイドライン(第3版)