らんそうしゅよう
卵巣腫瘍
卵巣にできた腫瘍の総称。多くは良性腫瘍であることが多いが、悪性腫瘍であることもあるので検査やフォローアップが重要
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最終更新: 2020.07.26
卵巣腫瘍の基礎知識
POINT 卵巣腫瘍とは
卵巣にできる腫瘍の総称です。ほとんどが良性腫瘍ですが、悪性腫瘍の場合もあります。腫瘍が小さいときには症状はほとんどありませんが、腫瘍が大きくなるとお腹の張りや下腹部痛などの症状が現れます。卵巣腫瘍が疑われる人には超音波検査やCT検査、MRI検査といった画像検査が行われます。卵巣腫瘍が悪性か良性かの判断は手術で卵巣を取り出さなければ、判断ができません。このため、手術で卵巣を取り出して、詳しく調べられます。卵巣腫瘍は婦人科で診療が行われます。
卵巣腫瘍について
卵巣 に発生する腫瘍 の総称- 卵巣は左右に1個ずつある、うずらの卵大の臓器
- 女性の卵子は卵巣にあり、月経周期ごとに1回、どちらかの卵巣から1つの卵子が排卵される
- 卵巣腫瘍の種類は2つに分類される
- 腫瘍が卵巣の中のどの組織からできたかの分類
良性腫瘍 か悪性腫瘍 (卵巣がん)かどうかの分類
- 卵巣腫瘍の90%は良性腫瘍
- 良性腫瘍の中には30cmを超えるようなものもある
- 一部の腫瘍には、女性
ホルモン (エストロゲン )を出す腫瘍もある
卵巣腫瘍の症状
腫瘍 が小さいときは症状 は出ない- 腫瘍が大きくなると出現する主な症状
腹部膨満 感(お腹が張って苦しい)- 下腹部痛
頻尿
- 腫瘍がお腹の中で捻れると(茎捻転)、突然の強い腹痛が起こる
- 女性
ホルモン (エストロゲン )を出す腫瘍の場合、不正性器出血を起こすこともある
卵巣腫瘍の検査・診断
- 触診、
内診 :卵巣 に腫瘍 がないかなどを調べる - 血液検査:
腫瘍マーカー などを調べる - 画像検査:腫瘍の有無や大きさ、位置、広がりなどを詳しく調べる
腹部超音波検査 MRI 検査
- 診断を確定するためには
生検 が必要- 卵巣は、手術以外の方法で生検することができない
- 画像検査や腫瘍マーカーから
良性 か悪性かをあらかじめ予測するが、最終的には手術による生検で診断が確定される
卵巣腫瘍の治療法
良性 の可能性が高く、大きさも小さい場合は特に処置を行わずに経過を観察していく- 最初は1から3ヶ月後、その後は3ヶ月から6ヶ月ごと
- 良性でも
症状 が出ている場合や、大きい場合(6cm以上)、妊娠している場合は手術による摘出を考える- 茎捻転や
腫瘍 が破裂などをしている場合、悪性が疑われる場合は手術を行う - また、妊娠している場合は、茎捻転や腫瘍の破裂などが起こりやすいので、小さめの腫瘍でも妊娠15-16週ごろに、無症状でも手術を行うことがある
良性腫瘍 の場合は腫瘍だけ取って卵巣 自体は温存できる場合がある- 腫瘍の位置や大きさによっては
腹腔鏡 下手術も可能 - 少なくとも1つの卵巣が残っていれば、妊娠は可能
- 茎捻転や
- 卵巣がん(
悪性腫瘍 )が疑われる場合- 卵巣だけでなく子宮やその周りの器官ごと摘出することが多い
- 腫瘍の広がりやタイプによっては、卵巣や子宮を温存することができる場合もある
- 妊娠、出産を希望する人は担当医とよく相談する必要がある
- 卵巣がんであった場合は、手術に加え
化学療法 を行うのが一般的
卵巣腫瘍に関連する治療薬
抗がん性抗生物質(アントラサイクリン系)
- 細胞の増殖に必要なDNAやRNAの合成を阻害することで抗腫瘍効果をあらわす薬
- がん細胞は無秩序な増殖を繰り返したり転移を行うことで、正常な細胞を障害し組織を壊す
- 細胞の増殖には遺伝情報をもつDNAやRNAの合成が必要となる
- 本剤は細胞内のDNAに結合するなどしてDNAやRNAの合成を阻害するなどして抗腫瘍効果をあらわす
- 本剤は土壌などに含まれるカビなどの微生物由来の薬剤であり抗がん性抗生物質などと呼ばれる
白金製剤(プラチナ製剤)
- 細胞増殖に必要なDNAに結合することでDNA複製阻害やがん細胞の自滅を誘導し抗腫瘍効果をあらわす薬
- がん細胞は無秩序な増殖を繰り返したり転移を行うことで、正常な細胞を障害し組織を壊す
- 細胞の増殖には遺伝情報をもつDNAの複製が必要となる
- 本剤はがん細胞のDNAと結合し、DNAの複製とがん細胞の自滅を誘導することで抗腫瘍効果をあらわす
- 本剤は薬剤の構造中に白金(プラチナ:Pt)を含むため白金製剤と呼ばれる
NK1受容体拮抗薬
- 抗がん薬による嘔吐中枢への刺激を阻害し、悪心(吐き気)・嘔吐を抑える薬
- 抗がん薬投与による悪心・嘔吐は延髄に嘔吐中枢に刺激が伝わりおこる
- 脳のCTZや中枢神経に多く存在するNK1(ニューロキニン1)受容体が作用を受け嘔吐中枢に刺激が伝わる
- 本剤はNK1受容体を阻害することで嘔吐中枢への刺激を抑える
- 原則として、5-HT3受容体拮抗薬(吐き気止め)と併用する