ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう
腰部脊柱管狭窄症
脊柱管が狭くなることで、脊髄やその他の神経が押されて、腰や脚にしびれや痛みがでる病気です。
7人の医師がチェック 139回の改訂 最終更新: 2022.03.11

腰部脊柱管狭窄症の治療について:手術やリハビリテーションなど

腰部脊柱管狭窄症の治療は保存的治療(手術をしない治療)と手術の2つに大別されます。保存的治療では痛み止めで症状を抑え、並行してリハビリテーションを行います。一方、手術では狭くなった脊柱管を広げて、症状の改善をねらいます。

1. 腰部脊柱管狭窄症の治療法は大きく2つに分かれる

腰部脊柱管狭窄症の治療は手術をするかしないかで2つに大別されます。手術をしない治療を保存的治療といい、痛み止めやリハビリテーションによって症状を緩和します。一方で、手術では狭くなった脊柱管を広げることによって、脊髄への物理的な圧力を逃し、症状の改善をはかります。 多くの場合、身体への負担が大きい手術ではなく、まず保存的治療が行われ、症状が回復するかどうか様子をみます。そして、「保存的治療では効果が乏しい人」や「日常生活への支障が大きい人」には手術が検討されます。

2. 腰部脊柱管狭窄症の保存的治療:薬物療法やリハビリテーションなど

保存的治療は主に薬物療法とリハビリテーションを組み合わせて行われます。薬物療法では主に痛み止めが使われます。リハビリテーションでは筋肉を強化したり、患部に負担のかかる姿勢を矯正したりします。

薬物療法:リリカ、トラムセット、ロキソニンなど

腰部脊柱管狭窄症によって生じる痛みなどが慢性化している人には痛み止めが用いられます。

【腰部脊柱管狭窄症に使われる鎮痛剤(痛み止め)】

いずれも飲み薬として使うことができますが、それぞれの薬で作用するメカニズムが異なるので、患者さんの症状に合わせてお医者さんが適した薬を選びます。お医者さんには症状が出やすい状況やその程度などを詳しく伝えるようにしてください。また、飲み薬に効果がない人には「神経ブロック」という方法で、痛み止めを腰に注射することもあります。痛み止めに加えて血液の巡りを改善する薬が使われることもあります。

リハビリテーション

リハビリテーションはいわゆる「リハビリ」のことです。腰部脊柱管狭窄症の悪化につながる姿勢や動きの有無をチェックし、避けるようにします。また筋力の維持・強化をはかり、症状の緩和につなげます。リハビリテーションは家で実践できるものも少なくありません。理学療法士や作業療法士の指導をよく聞き、日常生活の中でも意識するとより効果的です。

3. 腰部脊柱管狭窄症の手術:方法や後遺症、費用など

保存的治療を行っても効果が乏しい場合には手術が検討されます。ここからは手術の方法や合併症、費用、入院期間について説明していきます。

手術が検討されるタイミングについて

次のような症状が現れている人には手術が必要です。早急に手を打たないと症状が残る可能性があります。

【手術が必要となる腰部脊柱管狭窄症の症状】

  • 足の麻痺
  • 膀胱直腸障害

麻痺とは手や足などの機能が失われた状態のことを指します。腰部脊柱管狭窄症によって足が動かなくなったり、感覚が消失したりした場合は麻痺が疑われ、手術が必要になります。また、頻尿や残尿、失禁、尿意・便意の喪失といった膀胱直腸障害が起こっている人も速やかに手術を行われなければなりません。

一方で、症状が軽い人では必ずしも手術が必要とは限りません。むしろ症状が軽すぎると手術の効果が小さく、患者さんが期待するほど改善しないこともあります。効果が小さい可能性があるのならば、薬物療法やリハビリテーションで様子をみるのもよい選択だと考えられます。ですので、軽い症状で手術を検討する人は、得られる効果についてお医者さんとよく相談して、メリットとデメリットを十分に鑑みてから決めてください。

手術の方法について

手術の方法には「除圧術」と「固定術」の2つがあります。

除圧術では、骨や分厚くなった靭帯を取除いて脊柱管を広げます。脊柱管が広がることで神経への圧迫が緩和されます。固定術では骨や靭帯の一部を取り除く点は除圧術と共通していますが、背骨の不安定さを補うために金属などを使って固定します。いずれも、内視鏡や顕微鏡を使った身体への負担が小さいやり方で行えることがあります。

手術の合併症

症状の改善をねらって行う手術ですが、デメリットがないわけではありません。手術にともなって起こる悪影響を合併症といいます。もちろん必ず起こるわけではありませんが、一定の確率で発生します。

感染症
病原性の微生物が身体に侵入して繁殖し、身体に悪影響を及ぼすことを感染症といいます。手術でできた傷口や切り取った骨の断面に感染が起こることがあります。感染症が起こると発熱や腰痛といった症状が現れ、治療として抗菌薬や再手術などが必要になります。

■神経損傷
骨を削り取ったり補強の金属を埋め込む際に、神経が傷つくことがあります。損傷の程度によりますが、足の動かしにくさや感覚の麻痺といった症状が現れます。神経損傷からの回復のために、リハビリテーションや薬物治療を行います。

血腫の形成
手術をした箇所に血腫(血液の塊)ができてしまうことがあります。血腫によって神経が圧迫されると、足が麻痺したり、感覚異常などの症状が現れます。治療法は血腫の大きさによって変わります。小さな場合や神経への影響が軽い場合は自然に体内に吸収されるのを待ち、大きな場合や神経への影響が強い場合は血腫を取り除く治療が行われます。

■出血
手術中に血管を傷つけてしまうと、想定より多くの出血が起こります。出血量によりますが、失われた血液量が多い場合には輸血が必要になります。

手術の費用

手術の方法や入院期間によって費用が変わります。ですので、一概にこの程度の金額が必要とは言えません。しかしながら、どの程度の金額の用意が必要かは程度把握しておきたいものだと思います。ほとんどの医療機関ではおおまかな医療費については教えてもらえるので、遠慮せずに聞いてみてください。

手術に必要な入院期間

入院が必要な期間は2週間前後だと言われています。 多くの場合、入院前後で大まかなスケジュールの説明があります。しかしながら、手術の方法や傷の治りの早さ、リハビリテーションの進行具合などによって入院期間が変わってくるので、必ずしも説明された日に退院できるとは限りません。

手術後のスケジュール

傷の状態を確認したり、症状の改善程度を調べるために、手術後もしばらくは定期的な通院が必要です。手術直後は受診の間隔は短めですが、状態が安定してくると、受診間隔が長くなっていきます。お医者さんから受診を終了してもよいという話があるまで、受診は必ず続けてください。