ぱにっくしょうがい
パニック障害
突然のパニック発作を起こし、生活に支障が起こる状態。不安障害の中の一つ
9人の医師がチェック 138回の改訂 最終更新: 2018.09.26

パニック障害の原因とは?遺伝、家庭環境、性格について解説

1. パニック障害の原因と背景について

パニック障害は、遺伝、性格、環境などの様々な原因により起きる病気です。突然激しい動悸や胸苦しさ、冷や汗、めまいが起きて、このまま死んだり狂ったりするのではないか、という恐怖感におそわれるパニック発作を何度も繰り返し、不安障害の一種でもあります。

パニック障害は20代半ばで発症することが多く、欧米では男性よりも女性に多いとされていますが、日本では男性と女性は同じくらいの頻度です。

初めてのパニック発作では、自分や周りの人が症状の激しさに驚いて、救急車を呼んで病院に運ばれることがあります。医師の診察や血液検査、心電図検査を受ける頃には症状が治まっていて、「検査では何も異常はないです」と医師に言われます。結局原因や診断が分からずにもやもやや不安を抱えたまま家に帰ることも多く、中には医師に冷たく対応されたと感じる人も多いでしょう。

欧米の研究によると、一生のうちにパニック障害を経験する人は2-5%程度いますが、パニック発作を起こしたことのある人は約3分の1とも言われています。実はパニック発作は、パニック障害ではない人にも起こることも多いです。例えば他の不安障害やうつ病の人もパニック発作を起こしやすいです。またパニック発作を一度起こしたからといってパニック障害と診断されるわけではありません。

それでは、さらに詳しくパニック障害の原因について説明していきます。

2. パニック障害の原因を詳しく解説

パニック障害の原因には、前述したように大きく分けると以下のことが関係しています。

  • 脳における不安、恐怖の神経回路の異常
  • 心理的要因(性格や気質)
  • 環境的要因
  • 遺伝的要因

昔は、パニック障害の原因は主に環境や本人の性格・気持ちの問題であるといった解釈がされていました。しかし現在は、様々な要因に加えて、脳の問題としても捉えられるようになってきています。それぞれについて見ていきましょう。

脳の中でも不安、恐怖を感じる部分の異常

パニック障害の原因として、不安、恐怖の神経回路に異常が起こっていると考えられています。パニック障害の症状でもある不安や恐怖といった感情が適切に生まれるためには、海馬(かいば)、扁桃体(へんとうたい)を中心とした大脳辺縁系と呼ばれる部位が正常に働くことが必要です。扁桃体には視覚、聴覚、嗅覚、触覚などのあらゆる種類の感覚が伝わり、それらの感覚の情報をもとに、危険であるかどうかを判断します。危険と判断した場合には、不安や恐怖の感情が生み出され、自律神経も介して動悸、汗、震えなどの症状があらわれます。

また、前頭葉や青斑核(せいはんかく)と呼ばれる部位も関係しているのですが、難しい話になってしまうのでここでは割愛します。

脳の中で起きていることを少し覗いてみると、脳の様々な部位同士で情報を伝える物質(情報伝達物質)に異常がある時に症状が表れるのではないかと注目されています。不安や恐怖に関係する物質(神経伝達物質と言います)は以下のものがあります。

  • ノルアドレナリン(ノルエピネフリン):緊張や恐怖を感じにくくなる
  • セロトニン:精神の安定や安らぎをもたらす
  • GABA(γアミノ酪酸):不安や恐怖を抑える

少し話は変わりますが、これらの物質を標的にしている治療薬として、例えば抗うつ薬を挙げます。抗うつ薬の治療効果としては、脳のセロトニンの濃度を高めることで精神の安定をもたらします。また、抗不安薬ではGABA受容体を刺激することで、不安や恐怖を抑えることを目的に治療を行います。このように、脳の中で重要な役割を果たしている物質の異常が原因となっている場合も多くあるわけです。

心理的要因(性格や気質)

パニック障害の原因、心理的要因についての画像

パニック障害には性格や気質といったもともとの特性も関係することがわかっています。どのような特性を持っていると、パニック障害を発症しやすいのでしょうか。

  • 不安気質:何事にも不安を感じやすい
  • 神経質

こういった性格・気質の人は普通の人に比べて、同じ出来事を経験した場合より多くのストレスを感じるため、不安発作を起こしやすいと言われています。不安が強い人や神経質な人は、不安発作に関係した体の変化(動悸や過呼吸、震え、めまい)に敏感で、より不安発作に発展しやすいのです。
また、パニック発作では、動悸や過呼吸、震え、めまいといった症状が表れます。例えば、一度不安発作による動悸を経験してしまうと、運動をきっかけにした動悸でも、条件反射的に不安発作が引き起こされるという話が聞かれることもあります。

環境的要因

パニック障害の原因には、自分が置かれている環境も含まれます。パニック障害を起こしやすい代表的な原因を紹介します。

・子ども時代の虐待
子ども時代に肉体的に、あるいは性的な虐待を受けると、大人になってパニック障害を起こす危険性が高まります。
 
・ストレスの大きな出来事
身近な人が亡くなる体験や病気は、パニック発作を起こすきっかけになります。

遺伝的要因

パニック障害の原因として、遺伝的な要因も検証されています。過去に行われた家族研究の結果によると、パニック障害の人の親や子には一般よりも高い確率でパニック障害が認められます。また双子研究では、二卵性双生児よりも一卵性双生児において、双子の2人ともパニック障害を発症する確率が高いことが分かっています。これらの家族研究、双子研究から、パニック障害には強い遺伝性があると考えられています。しかしパニック障害の原因となる遺伝子は見つかっておらず、現在も原因遺伝子を見つける研究が続けられています。

以上のように、パニック障害は 「 脳における不安、恐怖の神経回路の異常」「心理的要因(性格や気質)」「環境的要因」「遺伝的要因」など様々な原因によって発症する病気です。パニック障害は「心の問題ではないか」「弱い人間なのではないか」という誤解を受けがちです。あるいは自分自身をきつく責めてしまうことがあります。しかし脳の回路の異常や遺伝的要因も大きいので、自分を過度に責めたりはせず、また抗不安薬などの薬を使うことを頑なに拒否する必要はありません。