2017.01.15 | ニュース

ピルはOK?潰瘍性大腸炎治療中の影響を検証

スウェーデン6千人の統計から

from The American journal of gastroenterology

ピルはOK?潰瘍性大腸炎治療中の影響を検証の写真

ピル(経口避妊薬)は女性の健康と生活スタイルに貴重な効果をもたらします。その一方で血栓症などの副作用にも注意が必要です。潰瘍性大腸炎の患者がピルを飲むことによる影響が検討されました。

ピルの副作用として、特に重視されているのが血栓症です。もともとリスクの高い喫煙者などでは特に、ピルを飲むことによる血栓症の危険があり、きわめてまれですが死亡例もあります。

ほかの副作用のひとつとして腸炎があります。以前の研究で、ピルの潰瘍性大腸炎に対する悪影響が指摘されています。

新たにアメリカとスウェーデンの研究班が、潰瘍性大腸炎と経口避妊薬の関係についての研究を『American Journal of Gastroenterology』に報告しました。

この研究では、スウェーデンのデータをもとに、潰瘍性大腸炎の女性患者6,104人を対象とした統計解析が行われました。

対象者の中で、ピルを飲んだかどうかによって、潰瘍性大腸炎による手術の頻度などに違いがあるかが比較されました。

 

解析から次の結果が得られました。

非使用者と比べて、経口避妊薬を使用中または以前に使用経験があることは、潰瘍性大腸炎関連の手術のリスクと有意な関連がなかった(使用中で調整ハザード比0.79、95%信頼区間0.52-1.18、使用経験ありで調整ハザード比0.74、95%信頼区間0.46-1.18)。

関連は使った経口避妊薬の種類によっても(プロゲスチンのみの製剤とプロゲスチン・エストロゲン製剤の比較)、使用期間が長いことによっても、与えられた処方箋の数が多いことによっても影響されないように見えた(すべてPtrend>0.28)。

ピルを飲んでいる間も、飲むのをやめてからも、またどの種類のピルを飲んでいた人でも、潰瘍性大腸炎による手術の頻度に違いは見られませんでした

 

ピルを飲んだ人でも潰瘍性大腸炎による手術は増えていないというデータが得られました。持病がある人ではピルを飲めない場合もありますが、潰瘍性大腸炎についてはそれほど心配ないのかもしれません。

ピルは避妊に役立つだけでなく、生理痛を軽くしたり、生理の周期を整えるなど、たくさんの利点があります。副作用もありますが、副作用を減らすために成分を調整するなどの工夫が長年の間に積み重ねられています。妊娠したくなったときは飲むのをやめれば妊娠できます。

ピルの効果と副作用を正しく知って役立ててください。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Oral Contraceptive Use and Risk of Ulcerative Colitis Progression: A Nationwide Study.

Am J Gastroenterol. 2016 Nov.

[PMID: 27725646]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

▲ ページトップに戻る