2016.10.18 | ニュース

その抗生物質、ちょっと待った!米政府機関が副作用を警告

フルオロキノロンの使用範囲を限定する推奨

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レボフロキサシン(商品名クラビット)などの抗生物質は多くの場面で使われています。しかし、副作用の懸念から、使う場面に注意するべきとして、アメリカの政府機関から警告が出されました。

7月26日、アメリカの政府機関である米国食品医薬品局(FDA)が、フルオロキノロン系抗菌薬の安全性についての表示の変更を了承しました。

変更の内容は、副作用の可能性に対する警告を強化し、使用する範囲を限定するものです。

 

フルオロキノロン(ニューキノロン)系抗菌薬は、抗生物質(抗生剤)の一種です。多くの種類の細菌に対して効果があり、幅広い場面で使われています。

日本国内で販売されているフルオロキノロン系抗菌薬の例として次のものがあります。

  • レボフロキサシン(商品名:クラビット)
  • シプロフロキサシン(商品名:シプロキサン)
  • ノルフロキサシン(商品名:バクシダール)
  • ロメフロキサシン(商品名:バレオン、ロメバクト)
  • オフロキサシン(商品名:タリビッド)
  • トスフロキサシン(商品名:オゼックス)
  • プルリフロキサシン(商品名:スオード)
  • モキシフロキサシン(商品名:アベロックス)
  • シタフロキサシン(商品名:グレースビット)
  • パズフロキサシン(商品名:パシル)

 

新たに加わった警告は、5月12日に出された安全性情報に基づいています。飲み薬または注射として使われるフルオロキノロンが、腱、筋肉、関節、神経、中枢神経系(脳や脊髄)の機能障害を起こす可能性について触れています。

これらの副作用は、使用後数時間から数週間で発生することがあり、永久的である可能性があるとされています。

 

副作用が利益を上回る場合として、3種類の例が挙げられています。

  • 急性細菌性副鼻腔炎
  • 慢性気管支炎の急性細菌性増悪
  • 合併症のない尿路感染症

これらの患者に対しては、ほかに治療選択肢がない場合に限ってフルオロキノロンを使うよう制限するべきとされています。

一方、従来通りフルオロキノロンを使用可能な場合として、炭疽、ペスト、細菌性肺炎の例が挙げられています。

 

フルオロキノロンの副作用について、FDAは過去にも注意を促しています。2008年7月には腱炎と腱断裂について、2011年2月には重症筋無力症の悪化について、2013年8月には末梢神経障害についての情報が出されています。

フルオロキノロンを使用中の患者が以下のような症状を感じた場合はただちに医療従事者に相談するべきとされています。

  • 腱・関節・筋肉の痛み
  • ちくちくする感覚
  • 意識の混乱
  • 幻覚

 

医師はフルオロキノロンを安易に処方しないよう、患者は万一の場合に早く気付いて相談するよう注意が求められます。

フルオロキノロンの使用制限が求められた場合について、ほかの薬の選択肢として次のような例が考えられます。

  • 急性細菌性副鼻腔炎
    • 抗生物質を使う場合は、アモキシシリン・クラブラン酸合剤(商品名オーグメンチン)が考えられます。
  • 慢性気管支炎の急性細菌性増悪
    • 抗生物質を使う場合は、アモキシシリン(商品名サワシリンなど)、ドキシサイクリン(商品名ビブラマイシン)が考えられます。ただし、緑膿菌が原因だった場合については、フルオロキノロンを使わないとすると判断が難しくなります。
  • 合併症のない尿路感染症
    • 非常に多くの人に起こる膀胱炎などがここに含まれます。治療にはST合剤(商品名バクタなど)が勧められます。セフォチアム(商品名パンスポリンなど)を使うことも考えられるでしょう。

抗生物質の中にはたくさんの種類があり、病気に合った薬を選ばなければ効果が期待できません。今回の警告のように、効果や副作用について新しい情報が世界で共有されていくことにより、少しずつ治療法が進歩していきます。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

FDA updates warnings for fluoroquinolone antibiotics.

FDA News Release, 2016 July 26.

http://www.fda.gov/newsevents/newsroom/pressannouncements/ucm513183.htm

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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