◆筋力、バランス能力などの変化を調査
研究班は、65歳から71歳の女性554人を対象に、体重当たりのタンパク質摂取量、除脂肪量(筋肉量など)、体脂肪量と身体機能の関係を統計解析により調べました。
対象者はライフスタイルに関するアンケートへの回答、3日間の食事記録、脂肪や筋肉などの体の成分および身体機能測定を行いました。また、サルコペニア(様々なことが原因で筋肉の量が低下していく症状の総称)の有無についてEuropean Working Group on Sarcopenia in Older Peopleの基準に従って決定しました。
また測定から3年後に再び同じ検査を行い、身体機能の変化の様子も調べました。
◆たんぱく質摂取量の多い女性の方が身体機能が高い
以下のような結果が得られました。
ベースラインにて、たんぱく質摂取量の多い女性(≥1.2 g/kg体重)はたんぱく質摂取量の少ない女性(≤0.8 g/kg 体重)、たんぱく質摂取量が中等度の女性(0.81-1.19g/kg 体重)と比較して、握力/体重(P=0.001)、膝伸展/体重(P=0.003)、片脚立位(P=0.047)、椅子起立(P=0.043)、スクワット(P=0.019)、床へのスクワット(P=0.001)、10m速歩き速度(P=0.005)、short physical performance battery スコア(P=0.004)のパフォーマンスが統計的に有意に良好であった。フォローアップの結果において、たんぱく質摂取量の多さは3年以上にわたり、握力/体重、片脚立位、6mのタンデム歩行の低下のしにくさと関係があった。
研究開始時点で、たんぱく質摂取量の多い女性は筋力やバランス能力、歩行速度が良好であり、身体機能が高いことが明らかになりました。さらに、3年後にもう一度測定したときも筋力とバランス能力の低下が少なかったという結果になりました。
研究班は、「この研究は、高齢女性においてたんぱく質摂取量の多さと体脂肪量の少なさは、身体機能と正の関係性があることを示唆する」と結論づけています。
高齢になっても、たんぱく質を積極的に摂取することは健康維持のために役立てられるかもしれません。
執筆者
Dietary protein intake is associated with better physical function and muscle strength among elderly women.
Br J Nutr. 2016 Feb.
[PMID: 26857389]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。