◆すでに心筋症が起こった人で、さらに悪化を防げるか
シャーガス病の病原体はクルーズトリパノソーマという寄生虫です。サシガメに刺されることで感染し、シャーガス病の症状として発熱や腫れを起こします。ベンズニダゾールはクルーズトリパノソーマを除去することで急性期の治療に効果を現す薬です。
研究班は、シャーガス病による心筋症が起こっている人2,854人を対象として、最大80日の間、ベンズニダゾールを飲むか、偽薬を飲むかにランダムに分けました。その後対象者を5年あまり追跡し、死亡、心停止からの蘇生など、シャーガス病が原因になりうる心臓と関係する病状の悪化が起こる頻度を調べました。
◆寄生虫は減ったが…
追跡期間後の検査で、ベンズニダゾールを使ったグループのほうが寄生虫が見つかることが少なくなっていましたが、病気に対しては以下の結果でした。
一次アウトカムはベンズニダゾール群の患者の394人(27.5%)、偽薬群の414人(29.1%)に起こった(ハザード比0.93、95%信頼区間0.81-1.07、P=0.31)。
死亡などの合計の頻度は、ベンズニダゾールを使ったグループと使わなかったグループで、違いが見られませんでした。
心筋症が見つかる時点では、すでに寄生虫がいなくなっても止められない変化が起こっているのかもしれません。
シャーガス病の流行がある中南米地域では、サシガメに刺されないため長袖の服や蚊帳を使って対策が試みられています。有効な治療が今もなお待ち望まれています。
執筆者
Randomized Trial of Benznidazole for Chronic Chagas' Cardiomyopathy.
N Engl J Med. 2015 Oct
[PMID: 26323937]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。