2015.11.04 | ニュース

慢性炎症性脱髄性多発神経炎の治療法、血漿交換の効果と副作用は?

RCT文献のレビューから

from The Cochrane database of systematic reviews

慢性炎症性脱髄性多発神経炎の治療法、血漿交換の効果と副作用は?の写真

慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)は、2か月以上にわたる手足の感覚障害や運動障害を特徴とする、原因不明の病気です。治療に使われることがある血漿交換の効果と副作用について、これまでの研究結果がまとめられました。

◆異常な抗体を取り除く治療

CIDPの原因は不明ですが、何らかの免疫の異常により、自分自身の体の組織を攻撃してしまう抗体が作られることで、神経がダメージを受けると考えられています。血漿交換は血液から異常な抗体を取り除くことで治療をはかる方法です。

この研究は、過去の文献を検索し、CIDPの治療として血漿交換の効果を調べた研究を集めて内容を吟味しました。

 

◆短期的な効果があるが、再び悪化する場合も

次の結果が得られました。

1件のクロスオーバー試験が、18人の参加者を対象にした4週間の治療後に、血漿交換(4週間に10回の交換)によって11ポイント障害スケールに偽治療よりも2ポイント(95%信頼区間0.8-3.0)の改善を示した。改善のあった12人のうち8人に、血漿交換後の急速な悪化が見られた。

ランダム化されていない根拠から、血漿交換は手技の3%から17%において有害事象を誘発することが示された。これらの事象はときに深刻だった。

見つかった研究の中で、血漿交換により機能障害の症状が改善する効果が見られましたが、効果が現れたあと、再び悪化する人も見られました。また、深刻な副作用や軽い副作用を含む、有害な出来事が、治療を受けた人の3%から17%に起こりました。

研究班はここで得られた結果を、「2件の小規模な試験による中等度または高い質の根拠から、血漿交換はCIDPにおける機能障害、臨床的障害、運動神経伝導速度に有意な短期的改善をもたらすが、その後に急速な悪化が起こりうることが示された。経静脈的アクセスの困難、クエン酸の使用、血行動態の変化に関する有害事象はまれではない」とまとめています。

 

慢性炎症性脱髄性多発神経炎の原因はいまだ不明ですが、ステロイド薬や免疫グロブリン静脈内投与(IVIg)、血漿交換などの治療により、症状が完全になくなる人もある程度います。治療効果のデータが集まることで、最適な治療法を検討する役に立つかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Plasma exchange for chronic inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathy.

Cochrane Database Syst Rev. 2015 Aug 25

[PMID: 26305459]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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