2015.09.25 | ニュース

乳がんが転移したあとの治療では、もとの乳がんを切っても意味がない?

350人のランダム化試験

from The Lancet. Oncology

乳がんが転移したあとの治療では、もとの乳がんを切っても意味がない?の写真

がんがほかの臓器に転移した場合、がんがある複数の場所のうち1か所だけを治療しても、ほかの場所にあるがんが症状を起こしたり死因になる可能性があります。乳がんが転移したあと、もともとあった場所のがんを治療する意義について研究が行われました。

◆局所療法あり vs なし

乳がんの治療には手術、放射線療法、化学療法などがあり、手術と放射線療法は特定の場所を治療の対象とする「局所療法」、化学療法は全身に抗がん剤を届けることによる「全身療法」と言われています。

乳がん以外のがんでは、転移がある場合に局所療法は行うべきでないと言われているものもありますが、乳がんについては、転移があっても局所療法に利点があることを示唆する報告があり、局所療法を行うべきかどうかは意見が統一されていません。

この研究は、転移がある乳がんの患者を対象として、乳がんがもとあった場所の局所療法を行うグループと、局所療法は行わないグループにランダムに分け、それぞれ治療を行い、結果を比較しました。

 

◆全生存期間に差がない

次の結果が得られました。

全生存期間の中央値は、局所療法群で19.2か月(95%信頼区間15.98-22.46)、非局所療法群で20.5か月(16.96-23.98)だった(ハザード比1.04、95%信頼区間0.81-1.34、P=0.79)[...]。記録された唯一の有害事象は、局所療法群の1人の患者に起こった手術関連の創傷感染症だった。

死因を問わない全体としての生存期間に、局所療法を行うか、行わないかによって、違いが見られませんでした

研究班は「診断時に転移のあった乳がんの患者で、第一選択の化学療法に応答があった場合、原発腫瘍の局所療法が全生存率に影響することを示唆する根拠はなく、局所療法はルーチンの治療の一部とされるべきではない」と結論しています。

 

転移があるがんの治療は、患者の状態などによって非常に多くの場合に分かれ、またさまざまな治療法が組み合わせて使われます。そのため、特定の治療法に効果が期待できるどうかは単純に判断できず、この研究でも、一部の患者に局所療法の効果があった可能性は否定されません。

判断材料が比較的少ない段階の情報として参考になるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Locoregional treatment versus no treatment of the primary tumour in metastatic breast cancer: an open-label randomised controlled trial.

Lancet Oncol. 2015 Sep 9 [Epub ahead of print]

[PMID: 26363985]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

▲ ページトップに戻る