2015.07.03 | コラム

急性アルコール中毒で救急車。その後どんな治療が?

救急搬送が多いのは4、7、12月

急性アルコール中毒で救急車。その後どんな治療が?の写真

お酒の飲み過ぎで倒れてしまう「急性アルコール中毒」。救急外来ではとても受診が多い病気の一つですが、病院にたどり着いた後には、どのような治療が行われるのでしょうか。また急性アルコール中毒になると、どのような症状が出るのでしょうか。

◆毎年死亡者が出る、急性アルコール中毒

悲しいことに、若年者を中心とした飲酒後の突然死は例年報告があり、無くなることがありません。救急搬送の患者が多い上位3つの月は順に 12、4、7月です(2013年 東京消防庁調べ)。12月は忘年会、4月は歓迎会やお花見、7月は花火大会や納涼会の季節ですね。

お酒の飲み過ぎが死につながるケースには、大きく分けて4つのパターンがあります。

  1. 飲酒 → 嘔吐 → 吐物が詰まって窒息
  2. 飲酒 → 呼吸が弱くなって止まる → 酸欠
  3. 飲酒 → 酔ったことによる事故(階段からの転落や交通事故など)
  4. 慢性的な大量飲酒による病気(肝硬変など)

このうち1から3が、急性アルコール中毒によるものです。

 

◆急性アルコール中毒の症状

お酒を飲むと、体内にアルコールが吸収されます。血中アルコール濃度が上がるにつれて出現する症状を、それぞれ見てみましょう。

  • 0.1%未満:気分が良くなる、ふらつく
  • 0.1-0.2%:判断力が低下する、情緒不安定になる(泣き上戸、笑い上戸)
  • 0.2-0.3%:ろれつが回らなくなる、歩行が困難になる
  • 0.3-0.4%:意識障害が出始める、失禁する、呼吸が弱く不定期になることがある
  • 0.4%以上:強い痛みにも反応しない昏睡状態になる、呼吸が止まることがある

「どの程度飲むと、血中アルコール濃度が何パーセントになるのか」というのは、飲む速度とその人の体質(肝機能など)にもよるため、一概には言うことができません。

 

◆病院での治療

急性アルコール中毒で病院へ救急搬送された場合に、医療者がまず確認するのは呼吸が正常にできているかどうかです。意識がなくても、しっかりとした呼吸があって、またのどに吐物などが詰まっていなければ、まずは差し迫った状況ではないと判断できるからです。

次に、他の病気が隠れている可能性も考えつつ、ケガの痕跡がないかを探します。救急車で受診するほどの人は意識がない場合が多いので、頭を打っていないかなどと尋ねることはできません。仮に受け答えができたとしても記憶が曖昧な可能性がありますから、やはり出血やアザがないかどうかを念入りに調べる必要があります。特に重要なのは頭部で、髪をかき分けたりライトで照らしたりしながら、打撲の跡を探します。

ケガがなく、その他の病気もなさそうで、大量に飲酒していたことが明らかなら、そこでようやく急性アルコール中毒と仮の診断を下すことになります。本当に診断がつくのは、お酒が抜けて体調が元通りになったことを確認できてからです。お酒だけだと思っていたら実は違法・脱法ドラッグの使用を隠していたり、急性アルコール中毒で転んで脳出血を併発していたりすることがあるため、診断は一筋縄ではいきません。

そして治療です。

残念ながら、今の医学ではアルコールの分解を薬で早めることはできません。病院でできることは対症療法に過ぎず、生理食塩水(水と塩分のみを含む液体)の点滴をする程度のことです。お酒を飲むと体が脱水状態になるので、それを改善するために行われることがあります。後は病院で横になって、お酒が抜けるのを待つことが最大の治療となります。

 

◆誰でもできる応急処置

もし知人や家族がお酒の飲み過ぎで倒れたら、誰でもできる応急処置には次のようなことがあります。

  • 呼吸の確認:ゆっくりでも、定期的な呼吸があることを確認する
  • 嘔吐の対応:もし吐いても、のどにつまらないように、横向きで寝かせる
  • 一人にしない:常に誰かが変化を見守る

脱水になるからといって、本人の意識がはっきりしない中で無理やり水を飲ませるのは良くありません。のどの刺激が原因で嘔吐してしまうことがあるためです。

どのような場合に救急車を呼ぶべきかの判断は難しいところですが、東京都ならば、「#」→「7119」に電話をすると、24時間体制で医療者が窓口になって電話で対応してくれます。また他の県でも似たようなサービスを行っている地域があります。

このように、困ったら自分一人で判断しようとせず、周囲の人の助けを借りることが重要です。また、実際に困った状況に陥らないようにするためにも、自分も周りも、適度な飲酒で楽しく飲めるのが何よりだと思います。

執筆者

沖山 翔

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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