子どもと手をつなぐとき注意すべきたった1つのこと:肘内障に要注意!
子どもと道を歩くとき、よほど安全が確保された環境ではない限り、手をつなぐ親御さんが多いと思います。子どもを危険から守るためにを手をつなぐことは必要なことですが、手をつなぐとき1つだけ注意してほしいことがあります。それは手を強く引っ張ってはならないということです。子どもの手を強く引くと「肘内障」という怪我のもとになってしまうことがあるのです。
肘内障とは肘関節が外れかけている(亜脱臼)ことで、主に肘関節が不安定な幼少期(特に1歳から3歳)に手を強い力で引っ張られることで起こります。世間一般では「肘が抜ける状態」として知られており、耳にしたことがある人もいるかもしれません。今回のコラムでは、肘内障について簡単に説明し、予防について考えていきます。
肘内障の症状には特徴がある
肘内障を起こすと、肘を内側に回した位置でだらんと腕を垂らした状態になります。腕をあげることができなくなり、動かそうとすると痛がります。また、肘内障を起こした腕を使おうとしなくなります。 骨折などで見られる強い腫れはないことが多く、皮膚が内出血で青黒くなったりすることもほとんどありません。
肘内障の治療に手術は必要ない
「肘が抜ける」と聞くと、大変なことが起こったように思えますが、肘内障の治療に手術は必要ありません。用手的整復という方法で外れかけた肘をもとの状態に戻せます。具体的にはお医者さんが肘をつかんだ状態で、肘を曲げ伸ばししてはめ込みます。痛みはそこまで強くないので麻酔をせずに行うことがほとんどです。整復がうまくいくと、すぐに肘を動かせるようになります。 平日の日中であれば、小児科や整形外科で肘内障の治療を受けることができますし、休日や夜中などでは救急外来で対応してもらえます。
再発はありえるが過度に心配する必要はない
肘内障は繰り返し起こることがあります。しかし、成長とともに肘の固定がしっかりしてくるので、再発の可能性は下がっていきます。大人になって再発することはまれです。
肘内障を予防するにはどうすればいいのか
ここまで肘内障の症状や治療、その後の経過について簡単に説明しました。しかしながら、肘内障を起こさないに越したことはないので、最後に予防について考えていきたいと思います。予防法は極めて簡単で「手を強く引っ張らないこと」になります。両手を持ち上げるぶら下がり遊びや、手をつないでひっぱり合うような遊びは3歳くらいまでは避けてください。 ただどうしても手を強く引かざるをえない場面は存在します。例えば、車道に子どもが不意に飛び出しそうになったり、階段から転び落ちそうになった場合は強く手を引かざるを得ません。こうした危険と隣合わせの環境ではあらかじめ子どもの安全を確保しておくことが「腕を強く引かない」予防ひいては肘内障の予防になります。 そこで、次の2つを意識してください。
- 危険なエリアに近い側は必ず大人が歩く
- 危険なエリアは抱っこで乗り切ってしまう
例に出した車道のように、危険なエリアと子どもの距離を極力とるようにしてください。当たり前のように思えることですが、着実に実行するのは意外に難しいことです。実際、車道側を子どもが歩いているのを目にするのは珍しいことではありません。歩いていると、知らず知らずのうちに大人と子どものポジションが入れ替わってしまうのだと思います。手をつなぐ大人は状況の変化に敏感になり、常に子どもを危険エリアから遠ざけるようにしてください。 また、歩けるようになった子どもは、よほど疲れていない限り、抱っこより歩くのを好むケースが多いように思います。大人が想像している以上に自分の足で歩くのが楽しいのかもしれません。なるべくなら歩かせてあげたいものですが、歩行が危険な場所では、抱っこで乗り切ってしまうのも1つの考え方です。例えば歩道がなく側溝とも接している細い道や急な階段では抱っこの方が望ましいことも多いでしょう。肘内障ばかりではなく、転倒転落や交通事故といった大きな危険からも遠ざけてあげられます。
長々と説明しましたが、要は大人が周囲の状況をしっかり見定めて、子どもにとって最も安全な対応をすれば、自ずと肘内障のリスクを最小化できるのです。 今回のコラムでは肘内障の概要と筆者の考えを交えた予防法について説明しました。肘内障から子どもを守ることにつながれば幸いです。
執筆者
Brian R Moore, Joan Bothner, Radial head subluxation (nursemaid's elbow), UpToDate.(2020.11.26閲覧)
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。