2018.06.12 | コラム

食物アレルギーと診断された人や対応にお困りの人へ

アレルギー専門医が語る食物アレルギーと上手に向き合うための方法
食物アレルギーと診断された人や対応にお困りの人への写真
(C) Bernd Jürgens - Fotolia.com

アレルギーはみなさんの身近にある病気です。アレルギーは多くのものが原因となります。花粉やホコリ、金属などが有名ですが、食べ物によって起こるアレルギー(食物アレルギー)についてご存知でしょうか。食物アレルギーは比較的多くの人が経験すると言われています。

1.どれくらいの人が食物アレルギーになるのか?

日本における子どもの食物アレルギーの患者さんは近年増えています。2015年までの報告で1歳まで(乳児期)に5-10%の子どもが経験し、3歳の時点では10%弱の子どもに認められると言われています。簡単に計算すると、3歳前後までのお子さんの10人に1人は食物アレルギーがあるということになります。一方で、年齢が大きくなるとともに今までアレルギーがあったものも食べられるようになるお子さんが増えてくることもわかっており、小学生から高校生を対象にした調査では、食物アレルギーの患者さんは2%程度であったと言われています。

 

2.これってほんとにアレルギー?

そもそも、食物アレルギーとはどのように診断されるのでしょうか。

「トマトを食べさせたら口の周りが赤くなった」「牛乳を飲ませたら下痢をした」といった出来事は多くのお子さんに見られます。しかし、このエピソードは、トマトが付着したことによる接触性皮膚炎かぶれ)の可能性や、牛乳に含まれる乳糖によって生じた下痢(乳糖不耐症)の可能性も考えられるため、一概にこれらのエピソードだけから食物アレルギーとは診断できません。

また、「離乳食を始める前に念のため行った血液検査で食物特異的IgE値が高かったため食べるのをやめて、そのまま評価することなく除去し続けている」というお子さんも少なからずお見かけします。こうした人の中には実際には食物アレルギーではない人も多く含まれており、本当に食べ物アレルギーなのかどうかを正しく診断することが必要です。

 

特異的IgE検査について

血液検査で食物特異的IgE値が高いということは、その食物に感作を受けている状態(特定のものによって影響を受けて、同じものに対して敏感になること)を意味するだけであり、アレルギー症状が必ず出るという訳ではありません。よくある例として、アトピー性皮膚炎が重症の場合に食物特異的IgE値が高くなることがありますが、皮膚の治療をしただけでIgE値が下がるということも多くみられます。これはアトピー性皮膚炎で荒れた皮膚に直接食物が接することで皮膚からの感作を受け(IgE値が上昇)、皮膚がきれいになることで皮膚感作がなくなる(IgE値低下)という状態を示していると考えられます。

 

3.食物アレルギーの診断とは

食べ物アレルギーと確実に診断するためにはどのようにするのでしょうか。

診断の際のポイントは以下の2つです。

 

  • 特定の食物を摂取することにより症状が引き起こされること
  • 特異的IgE抗体など免疫学的な反応が起こっている可能性があること

 

この2点を確認することで診断されます。具体的には同一の食材を摂取することで同じような症状が引き起こされること(再現性がある)、血液検査でその食材に特異的なIgE抗体が陽性であることやスキンプリックテストを確認することで診断につながります。

 

4.食物経口負荷試験とは

安全に食物を摂取する方法として食物経口負荷試験がありますが、近年この方法を試す人は増えています。負荷試験を行う目的としては以下の2点があります。

 

  • 疑わしい食物を摂取して症状が出現するかを確認する(確定診断)
  • 過去に症状が出たことが明らかな食物が、現在は摂取可能になっているかを確認する(耐性獲得・摂取可能な上限量の判断)

 

それまでにアナフィラキシー(短時間で全身に激しい症状が出るアレルギー反応)を経験したことがあるかどうかなど、症状に応じてリスクが検討されます。高リスクと判断された場合には専門施設での入院して負荷試験が行われますが、低リスクと判断された場合には外来で負荷試験を行うことも可能です。

負荷試験の方法は各施設ごとに異なる場合もありますが、摂取総量を3回または5回程度に分割して徐々に量を増やしていく漸増法が広く行われています。摂取間隔については、15分から30分ごとの場合が多いですが、あまり間隔が短いとどの量までで症状が出現したのか(症状出現閾値)について確認することが難しくなるため、患者さんに症状出現までの時間を確認するなどして、必要時には60分程度まで間隔をあけて行うこともあります。

 

5.食物アレルギーと診断されたら

負荷試験や実際の症状などから食物アレルギーの診断が確定した後には、次のどちらかになります。

 

  1. 完全除去が必要になる
  2. 症状の出ない範囲の最大量を食べていく

 

1.の完全除去が必要な場合はアレルギーが起こる食べ物を少しも食べてはいけないので、間違って口にしないよう注意をすることが必要です。しかし、厳密な除去が必要な人は多くはなく、少量でもアナフィラキシーを起こした経験があるなどの一部の患者さんのみです。

ほとんどの人は2.にあてはまり、症状の出ない範囲でアレルギーの注意しながら食べることが可能です。また、症状が出ないで食べることのできる最大量を摂取し続けることが、やがて摂取でき得る量を増やすことにつながるとされています。しかし、素人判断で量や食材を決定すると重大な事故につながることがあり、必ず医師に相談するようにしてください。また、同じ食材を食べ続けることで飽きてしまうことがありますが、調理方法を変えたり同じ程度のタンパク量を含む別の加工品に変えるなどで工夫することができます。

 

6.経口免疫療法とは

上で述べた2.の方法と似ているようで異なる方法として「経口免疫療法」という治療法があります。

この方法は通常の生活では早期の耐性獲得(慣れによってアレルギーが出なくなること)が難しい人に対して行われます。この治療法では、事前に食物経口負荷試験で症状が出る量(症状誘発閾値)を確認した後に、原因食物を医師の指導のもとで食べてもらいながら耐性獲得を目指します。この治療法では症状が出てくる危険性が高い上に、一部の人では重篤なアナフィラキシー状態になることもあるため、「食物アレルギーを熟知した専門医が臨床研究として行うべき」であるとガイドライン上でも定められています。

現時点までの臨床研究の結果からは経口免疫療法は有用であるとの報告が多いですが、「どのような患者さんにどのくらいの量でどのくらいの期間続けたか」などの詳細な情報はそれぞれの報告によって異なっており、統一した方法や基準が定められない状況です。とはいっても、完全除去を続けるよりも少量ずつでも摂取し続けることで症状が出ない範囲を広げられる可能性の高い治療法でもあるため、特に重症な患者さんにとっては貴重な治療法です。専門の医師の指導の下で症状出現時の対応がきちんと行える状況であれば選択の一つにあがると考えます。

 

7.結局のところどんな治療を選べばよいのか?

いずれの治療法を選択するとしても、安全に健康的に生活を送ることが大前提です。また、それぞれの患者さんのライフスタイルにあった治療法を選ぶことが重要です。食物アレルギーの分野では、特にこの10-20年ほどの間に色々な研究が行われ、薦められる治療法も変わってきました。そういった専門知識を持った医師の下で毎日無理なく続けられる方法を相談することが、食物アレルギーを克服するための最善で最短の方法と考えられます。

参考文献

1. 食物アレルギー診療ガイドライン2016

http://eckyowa.shop16.makeshop.jp/smartphone/detail.html?id=000000000037

2. よくわかる食物アレルギーの基礎知識

https://www.erca.go.jp/common/img/yobou/uploads/kanjazensoku/ap027.pdf

3. 食物経口負荷試験実施施設

https://www.foodallergy.jp/ofc/

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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