PCOSにより排卵が少ない女性はメトホルミンで出生しやすくなるか
イギリスの研究班が、PCOSにより排卵が少ないかまったくない女性を対象として、メトホルミンなどの薬剤(インスリン抵抗性改善薬)により出生しやすくなる効果があるかどうかを検討し、結果を『The Cochrane Database of Systematic Reviews』に報告しました。
この研究は文献の調査により行われたものです。研究班は論文データベースを2017年1月までの範囲で検索するなどして、関係する研究のデータを集めました。見つかったデータを評価し統合しました。2012年にも同様の調査が行われていましたが、より新しい研究も含めて更新しました。
メトホルミンは血糖値を下げる作用があり、2型糖尿病の治療で使われています。PCOSに対しても研究がありますが、日本では保険適用が認められていません(2017年12月時点)。
排卵・臨床妊娠が多い
調査の結果、メトホルミンについての42件の研究を含む、46件の研究が見つかりました。メトホルミン以外の薬剤については出生のデータがありませんでした。
メトホルミンを飲むか偽薬を飲むかで比較した研究で、メトホルミンを飲んだ人のほうが、排卵や臨床妊娠の結果が得られることが多いと見られました。
副作用について、メトホルミンを飲んだ人のほうが胃腸の副作用が多く現れていました。
出生の結果についてはデータの確信度が低いものと判断されましたが、メトホルミンのほうが出生がやや多いという結果でした。
メトホルミンとクロミフェンクエン酸塩の併用をクロミフェンクエン酸塩単独と比較した研究も見つかりました。クロミフェンクエン酸塩は排卵誘発薬です。
クロミフェンクエン酸塩に加えてメトホルミンを飲んだ人のほうが、排卵や臨床妊娠の結果が得られることが多いと見られました。
副作用については、メトホルミンとクロミフェンクエン酸塩の組み合わせのほうが、クロミフェンクエン酸塩単独に比べて胃腸の副作用が多いと見られました。
出生についてのデータは確信度が低いものと判断されましたが、メトホルミンを加えたほうが出生がやや多いという結果でした。
メトホルミンは有効か?
PCOSがあり排卵が少ない女性に対するメトホルミンの効果の調査を紹介しました。
メトホルミンは偽薬に比べて排卵や臨床妊娠を増やし、クロミフェンクエン酸塩に加えた場合も同様の結果でした。出生については不確かながらメトホルミンを使ったほうが出生が多いというデータがありました。
ただし、日本ではPCOSに対してメトホルミンの使用は保険適用が認められていません。
日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会の『産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2014』には「肥満、耐糖能異常、インスリン抵抗性のいずれかを認め、かつクロミフェン単独で卵胞発育を認めなければ、メトホルミンを併用する」という記載があります。
実際にメトホルミンを使うかどうかの判断は複雑ですが、最近までの研究データが要約されていることによって、予想される効果や害について見通しを持ったうえで考える役に立ちます。
執筆者
Insulin-sensitising drugs (metformin, rosiglitazone, pioglitazone, D-chiro-inositol) for women with polycystic ovary syndrome, oligo amenorrhoea and subfertility.
Cochrane Database Syst Rev. 2017 Nov 29.
[PMID: 29183107]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。