ビオチン7日摂取後の血液検査
アメリカのミネソタ大学などの研究班が、ビオチンを飲むことで血液検査の結果に影響が出るかを調べ、結果を医学誌『JAMA』に報告しました。
ビオチンはホルモンなどを測定する方法の中で使われる物質でもあります。体内に大量のビオチンがあると、測定の過程に影響し、検査値が不正確になることが考えられます。
この実験では31歳から45歳の6人の健康な成人が対象となりました。対象者は1日10mgのビオチンを7日間飲み、3回採血されました。
- ビオチンを飲む前(実験開始時)
- ビオチンを飲んだ後(実験開始7日後)
- ビオチンを飲むのをやめて7日後(実験開始14日後)
それぞれの血液でホルモンなどの量を測定しました。測定には違った複数の方法を使い、検査法ごとに測定値のずれがあるかを調べました。
一部の検査にずれが発生
ビオチンを飲む前にはビオチンの血中濃度は平均774pg/lでしたが、摂取後7日目には全員で測定値上限の3,600pg/lを超えて上昇しました。
甲状腺刺激ホルモン(TSH)について、4種類中1種類の検査法では試験開始時に比べてビオチン摂取後7日目に測定値が平均94%低く、全員が基準値未満となりました。
ほかに副甲状腺ホルモン(PTH)の測定値が低くなる、甲状腺ホルモンの一種のトリヨードサイロニン(T3)の測定値が高くなるなどの結果がありました。
このようにビオチンを使う検査法が23種類試されたうち、9種類の検査で検査値のずれが確かめられました。ビオチンを使わない検査法ではずれはありませんでした。検査法の原理から説明のつかないずれは見つかりませんでした。
ビオチンを飲むのをやめて7日後の検査値は、おおむね飲む前と同程度の水準まで戻っていました。
研究班は「ビオチンのサプリメントを飲んでいる患者については血液検査をオーダーする前に、または結果を解釈する際に、これらの結果を考慮するべきである」と結論しています。
サプリメントが検査に影響?
ビオチンによる検査値への影響の実験を紹介しました。この結果は「検査が不正確になる」というものであり、健康被害を意味するものではありません。しかし検査値が誤って解釈されて病気が疑われるようなことがあれば、さらに不要な検査を受けることにつながるかもしれません。
ビオチンを含むサプリメントなどは日本でも販売されています。ビオチンはさまざまな食品に含まれているため、普通の食生活をしていれば不足することはなく、またこの実験で使われたほどの摂取量に届くこともありません。
サプリメントを飲んでいるときに病院に行くことがあれば、飲んでいるものを担当医に伝えることで、思わぬ影響にも対策しやすくなるでしょう。
執筆者
Association of Biotin Ingestion With Performance of Hormone and Nonhormone Assays in Healthy Adults.
JAMA. 2017 Sep 26.
[PMID: 28973622]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。