悪性黒色腫に対するニボルマブの有害事象
アメリカなどから集まった研究班が、ニボルマブを使用した患者に起こった有害事象について調査し、結果を専門誌『Journal of Clinical Oncology』に報告しました。
ニボルマブは日本では2014年に販売開始され、悪性黒色腫(メラノーマ)などいくつかの種類のがんの治療として使用可能になっています。悪性黒色腫は皮膚がんの一種です。
この研究は、ニボルマブを悪性黒色腫の治療に使用した4件の研究のデータを統合し、ニボルマブ(2週間ごとに2mg/kg)を使用した人に起こった有害事象を集計したものです。
有害事象とは、薬の副作用やその他の原因により発生した症状などの望ましくない結果のことです。有害事象の重症度は「グレード」で分類されます。入院治療が必要(入院中ならば入院期間の延長が必要)になった場合はグレード3以上とされます。
治療関連有害事象は71%
集計から次の結果が得られました。
576人の患者のうち、71%(95%信頼区間67%-75%)に何らかのグレードの治療関連有害事象が起こり(最も多くは疲労で25%、かゆみ17%、下痢13%、皮疹13%)、10%(95%信頼区間8%-10%)にグレード3から4の治療関連有害事象が起こった。薬剤関連死は報告されなかった。
ニボルマブを使用した患者576人のうち、軽度のものを含めて何らかの有害事象が現れた人は71%でした。有害事象のうち特に多くの人に現れたものは疲労、かゆみ、下痢、皮膚の症状(皮疹)でした。グレード3または4の有害事象は10%の人に起こりました。副作用による可能性がある死亡例はありませんでした。
副作用を把握してより安全に
ニボルマブの有害事象についての研究を紹介しました。
ここで報告されている「71%」という数字は、実際にニボルマブを使って治療される患者全体にちょうど当てはまるとは限りません。しかし、いくらか増減があったとしても、何らかの有害事象が現れることは考えに入れたうえで使う必要があると言えるでしょう。
どんな薬にも副作用があります。まれにしか現れない副作用は、多くの人が使ってはじめてわかってくることもあります。たとえばニボルマブの副作用については、2017年7月に添付文書が改訂され、「硬化性胆管炎」が「重大な副作用」の項に書き加えられました。
副作用について繰り返し調査することが、使用に当たって起こる可能性のある事態を予測し、安全対策として役立てることにつながります。
執筆者
Safety Profile of Nivolumab Monotherapy: A Pooled Analysis of Patients With Advanced Melanoma.
J Clin Oncol. 2017 Mar.
[PMID: 28068177]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。