認知症の確率を追跡した研究
アメリカのカリフォルニア大学の研究班が、持続する痛みと将来の認知症の確率の関係を調べ、結果を専門誌『JAMA Internal Medicine』に報告しました。
この研究は、アメリカで行われている大規模追跡研究のデータを解析したものです。研究の中で2年ごとに対象者の調査が行われています。ここでは2000年時点で62歳以上の参加者で、1998年と2000年の調査の両方に回答があった人を対象としました。
参加者10,065人のデータを使いました。
参加者が1998年と2000年の調査の両方で「中等度または重度の痛みでしばしば困っている」と答えた場合に「持続する痛み」があると判定しました。
神経精神医学的検査とインタビューの結果から、調査ごとに記憶力のスコアと認知症の確率を計算しました。2000年から2012年までの調査結果を解析の対象としました。
持続する痛みがあると記憶力低下が速く認知症の確率増加が速い
解析により次の結果が得られました。
共変量を調整すると、持続する痛みは、持続する痛みがない人と比べて記憶力低下が9.2%速い(95%信頼区間2.8%-15.0%)ことと関連した。
調整した認知症の確率は7.7%速く増加した(95%信頼区間0.55%-14.2%)。
持続する痛みがあった人では、なかった人に比べて速く記憶力は低下し認知症の確率が上がる傾向にありました。
痛みは治すべき?
持続する痛みと将来の認知症の関係を調べた研究を紹介しました。
持続する痛みには治療しにくいものもありますが、もし治療が不十分だったり合っていなかったりする人がいれば、うまく見つけ出して治療することで痛みを減らせるかもしれません。
ただし、痛みがあっても治療できない人や、治療しても効果が出ない人には、何らかのやむをえない背景があったことも考えられます。将来の認知症の可能性よりも、まずは目の前の痛みの原因を有効に治療することが検討されるべきと考えられます。
この研究結果だけでは、痛みを治療すれば認知症予防になるかどうかはわかりません。その効果を測ろうとするなら別の研究が必要です。
もともと健康な人で認知症を効果的に予防できる方法は知られていません。痛みと認知症の関係が将来もし判明すれば、痛みの治療をより重視する根拠とされるかもしれません。
執筆者
Association Between Persistent Pain and Memory Decline and Dementia in a Longitudinal Cohort of Elders.
JAMA. 2017 June 5.
[PMID: 28586818 ] http://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/article-abstract/2629448※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。