70歳以上でも全大腸内視鏡で大腸がんを予防できる?

大腸内視鏡は大腸がんやポリープを発見し、大腸がんを防ぐ効果が知られています。しかし、あまりに高齢で検査しても効果は限られています。70歳以上の人で効果があるかが調査されました。
70歳以上の全大腸内視鏡検査の効果
アメリカのハーバード大学などの研究班が、70歳以上の人を対象とした全大腸内視鏡検査の効果について統計解析を行い、結果を医学誌『Annals of Internal Medicine』に報告しました。
この研究は、アメリカの統計データを解析したものです。
2004年から2012年のデータを使い、70歳から79歳で特に大腸がんになりやすい背景がなく、直前5年以内に全大腸内視鏡検査を受けていない人を解析の対象としました。
全大腸内視鏡検査とは、内視鏡で大腸の全体を観察する検査です。大腸内視鏡検査にはほかに、大腸の一部にあたる肛門に近い部分だけを観察する方法(S状結腸の内視鏡検査)もあります。S状結腸の内視鏡検査も検診として行われ、効果が確認されていますが、この研究は全大腸内視鏡検査について調べています。
74歳までで効果あり
対象者を70歳から74歳と75歳から79歳の2グループに分けて解析すると、次の結果が得られました。
- 70歳から74歳
- 効果:8年後までの大腸がん発生率が2.62%から2.19%に減少
- 有害事象:1000人あたり5.6件
- 75歳から79歳
- 効果:8年後までの大腸がん発生率に差が確かめられない
- 有害事象:1000人あたり10.3件
有害事象とは検査にともなって起こる望ましくないことを指します。検査にミスがなくてもいくらかの確率で発生する有害事象もあります。全大腸内視鏡検査では出血などの可能性があります。
70歳から74歳では大腸がんを予防する効果が確かめられたという結果でした。
大腸がん検診は何歳まで?
74歳まで全大腸内視鏡検査の効果が確かめられたという研究を紹介しました。
この研究のほかには、米国予防医学作業部会(USPSTF)が内視鏡検査のほか便潜血検査などを選択肢とした大腸がんの検査を「50歳から75歳まで続けることを勧める」としています。USPSTFの見解とおおむね一致する結果となりました。
USPSTFの推奨では、全大腸内視鏡検査を使う場合は10年に1回検査を受ければよいとされています。
検査は特性を知ったうえで適切に利用することで、本来の効果を発揮できます。実際のデータを見て、検査が自分に合っているかを考える役に立ててください。
執筆者
Effectiveness of Screening Colonoscopy to Prevent Colorectal Cancer Among Medicare Beneficiaries Aged 70 to 79 Years: A Prospective Observational Study.
Ann Intern Med. 2017 Jan 3.
[PMID: 27669524]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。