2017.01.05 | ニュース

「MRIを撮れるペースメーカー」の勘違いに3学会共同の注意

条件付きMRI対応デバイスの適正使用を

MRIは強力な磁気を使います。金属製品が体に植え込まれている人には危険があります。条件付きでMRIを撮影できるペースメーカーなどの装置が最近普及していますが、不適切な使用例もあるとして3学会共同の注意喚起がなされました。

2016年9月23日に、日本医学放射線学会、日本磁気共鳴医学会、日本不整脈心電学会が共同で、ペースメーカーなどが植え込まれている人に対してMRIを適正に使うための注意の文書が公表されました。

 

MRIはCTのように体の断面を撮影できる画像検査です。脳梗塞などで救急治療を受けるときにも重要な検査になります。

MRIは強力な磁気を使うため、検査室に金属製品を持ち込むと強く引き付けられるなどの事故の恐れがあります。体の中に金属製品が入っている人は、さまざまな危険性から、MRIを使える場合が制限されます。

心臓にペースメーカーを植え込んだ人は、従来MRI検査が危険であり行ってはいけない(禁忌)とされていました。海外では不適切なMRI検査による死亡事故も報告されています。

しかし、最近登場した新しいタイプのペースメーカーなどは、安全にMRIを撮影できるよう工夫され、一定の条件を満たした場合にはMRIを撮影できることが認められています。

これらの「条件付きMRI対応」の装置(デバイス)も、条件に合わない場合にはやはりMRIが禁忌とされます。もちろん従来型のデバイスを植え込まれている人は変わらずMRI禁忌です。「MRIが安全になった」のでも「安全とわかった」のでもありません。

 

3学会の注意では、不適切なMRI検査が問題とされています。体にペースメーカーやその他のデバイスが植え込まれている人に対しては、MRIを撮影する前に次のチェックが求められています。

  • 施設基準を確認する
    • 条件付きMRI対応デバイスがある人にMRIを撮影できる施設には施設基準が決められています。
  • デバイスが条件付きMRI 対応デバイスであることを確かめる
  • 安全な検査ができる条件に従う

 

MRIを撮影するときの注意を紹介しました。

3学会から出されたのは、主に医療従事者に向けられた注意です。患者として検査を受けるときには、検査の条件などを覚えている必要はありませんが、医師や医療スタッフに伝えるべきこともあります。

  • 体に装置が入っていることを伝える
    • 以前にかかった病気や受けた治療を伝えておくことで確認がスムーズになります。
  • MRI対応カードを常に持ち歩く
    • MRI対応カードには、植え込まれた装置の情報が書き込まれています。検査前に必須の情報です。万一脳梗塞で突然倒れることがあっても医療従事者がすぐ確認できるようにする必要があります。

自分が直接検査や治療をするわけではなくても、医療従事者の注意や禁忌事項をある程度知っておくことは、協力して正しく安全な医療を実現するために大切なことです。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

植込みデバイス患者の MRI 検査に関する注意, 2016年9月23日

http://www.pmda.go.jp/files/000215128.pdf

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

▲ ページトップに戻る