弾性ストッキングによる予防効果の研究
飛行機のエコノミークラスに長時間座ったり、天災で自動車の中に寝泊まりするなどで、身動きの取りにくい状況になるとエコノミークラス症候群と呼ばれる病気が起こります。
- 足の血管に血のかたまり(血栓)ができる
- 血栓が心臓へ流れてしまう
- 心臓から肺に向かう血管に血栓が詰まる
- 胸の痛み、息苦しさ、失神、突然死につながる
足に血栓ができることを深部静脈血栓症と呼びます。手術後なども深部静脈血栓症が起こりやすくなります。予防のために弾性ストッキングが使われます。
弾性ストッキングは、足の部分ごとに少しずつ違う圧力でしめつけることで、血行をよくするように作られたストッキングです。
ここで紹介する研究は、飛行機に乗る場面に対象を絞って、弾性ストッキングを実際に履いて試した結果としてこれまでに報告されているデータをまとめたものです。
弾性ストッキングで深部静脈血栓症を予防、むくみ改善
文献の調査によって、条件に合う11件の研究報告が見つかりました。
集まったデータから次の結果が得られました。
両足に弾性ストッキングをはく試験において、フォローアップデータが入手できた参加者2,637人のうち50人で無症状の深部静脈血栓症が発生した。うち3人はストッキングを着用していた。47人は着用していなかった(オッズ比0.10、95%信頼区間0.04-0.25、P<0.001、高い質のエビデンス)。
弾性ストッキングを履いていた人では、飛行機に乗ったあとに無症状の深部静脈血栓症が発生した人が10分の1程度にまで少なくなっていました。
さらに、次のようにむくみを減らす効果も見られました。
ストッキングを着用することは、浮腫を減らすことに対して有意な効果があった(平均差-4.72、95%信頼区間-4.91から-4.52、6件の試験、低い質のエビデンス)。
有意な有害作用は報告されていなかった。
弾性ストッキングによる悪い影響の報告はありませんでした。
飛行機に乗る前は弾性ストッキング?
用心のため弾性ストッキングを履いて飛行機に乗ることで、深部静脈血栓症の対策になるかもしれません。
一方、エコノミークラス症候群の予防としては一般的にほかの方法も勧められています。
- 適度に水分を取る
- 足のストレッチやマッサージをする
- 座った姿勢から1時間に1回程度立ち上がって動く
弾性ストッキングは市販されています。ほかの方法も知ったうえ、弾性ストッキングを正しく使うことで、快適な空の旅に役立ててください。
執筆者
Compression stockings for preventing deep vein thrombosis in airline passengers.
Cochrane Database Syst Rev. 2016 Sep 14. [Epub ahead of print]
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。