代替医療とワクチン接種率の関係
アメリカのペンシルバニア州立大学の研究班が小児科専門誌『Pediatrics』に報告した研究を紹介します。
この研究は、アメリカ全国で行われた調査データを解析することで、代替医療(だいたいいりょう)とワクチン接種率の関係を調べています。調査では4歳から17歳の子どもが対象とされました。
研究対象とされた代替医療は次のように分類されました。
- 鍼治療など
- ハーブなど(マルチビタミンとマルチミネラルは除く)
- マルチビタミンとマルチミネラル
- 体に手で加える治療(カイロプラクティックなど)
- 体と精神に着目する治療(ヨガなど)
データが得られた9,879人の子どもについて、統計解析により、それぞれの種類の代替医療を利用したことがあるかどうかで、インフルエンザワクチン接種率に違いがあるかを調べました。
鍼・カイロ利用者は接種が少ない
次の結果が得られました。
インフルエンザワクチン接種率は、代替医療システムを利用したことのある子どもで低く(利用したことがない子どもと比べて33% vs 43%, P=0.008)、徒手的身体療法を利用したことのある子どもでも低かった(35% vs 43%, P=0.002)が、マルチビタミン/マルチミネラルを飲んだことのある子どもでは高かった(45% vs 39%、P<0.001)。
鍼治療など、またはカイロプラクティックなどを利用したことがある子どもでインフルエンザワクチン接種率が低くなっていました。
マルチビタミン/マルチミネラルを飲んだことのある子どもではインフルエンザワクチン接種率が高くなっていました。
インフルエンザワクチンにどんなイメージがありますか?
インフルエンザワクチンでインフルエンザを予防できることは、実際に打った人を調べた多くのデータから示されています。しかし、人は数字では動きません。効果があるといくら告知されていても、現実にはすべての人がワクチンを打っているわけではありません。
この研究で、体に人工物を入れない鍼やカイロプラクティックの利用者と、人工物であるビタミンやミネラルを飲む人で反対の傾向が出たことは面白い結果です。インフルエンザワクチンに対するイメージが関係しているのかもしれません。
薬やワクチンは体によさそうだと思いますか?
執筆者
Complementary and Alternative Medicine and Influenza Vaccine Uptake in US Children.
Pediatrics, 2016 Oct 3.
http://pediatrics.aappublications.org/content/early/2016/09/30/peds.2015-4664..info※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。