◆頭頚部がんが出なかった人は歯磨きをしていたか?
ここで紹介する研究は、過去の研究で得られたデータを使って、歯の衛生状態と頭頚部がんの統計的関連を調べたものです。
追跡調査で歯の状態と病気の発生などを調査された対象者のうち、頭頚部がんと診断された8,925人と、頭頚部がんではなかった12,527人を比較することで、もともと歯の状態がよかったかどうかに違いがあるかを調べました。
歯の状態を評価するために、抜歯などで失った歯(喪失歯)の数、毎日歯磨きをするか、毎年歯科医にかかっているか、歯肉の病気がないか、総入れ歯(総義歯)を使っているかを指標としました。
◆歯磨きする人で頭頚部がんが少ない
次の結果が得られました。
仮説どおりの方向に、何らかの頭頚部がんとの負の関連が、喪失歯5本未満(オッズ比0.78、95%信頼区間0.74-0.82)、毎年歯科受診すること(オッズ比0.82、95%信頼区間0.78-0.87)、毎日歯磨きをすること(オッズ比0.83、95%信頼区間0.79-0.88)、歯肉疾患がないこと(オッズ比0.94、95%信頼区間0.89-0.99)に対して観察され、総義歯装着との関連は観察されなかった。
喪失歯が少ない、毎日歯磨きをする、毎年歯科に行く、歯肉の病気がない人で、それぞれ頭頚部がんの発生が少なくなっていました。総義歯とは関連が見られませんでした。
研究班は「喪失歯が少ない、毎年歯科に行く、毎日歯磨きをすることを特徴とする、口の中の衛生状態が良いことは、頭頚部がんのリスクをわずかに減らすかもしれない」と結論しています。
歯磨きで口の中を清潔に保つことで、ほかにも健康に良い効果が挙げられています。歳を取ってもおいしく食事を楽しむためにも、歯磨きの習慣をつけましょう。
執筆者
The role of oral hygiene in head and neck cancer: Results from International Head and Neck Cancer Epidemiology (INHANCE) Consortium.
Ann Oncol. 2016 May 27. [Epub ahead of print]
[PMID: 27234641]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。