子どもの片頭痛に効く薬はどれ?2016年2月までの研究報告から

子どもが薬を使ったときの効果と副作用は、大人と違っていることがあります。片頭痛でも、子どもと大人では薬の使い方が少し違います。子どもの片頭痛の薬の効果と副作用について、これまでに研究から出ている結果がまとめられました。
◆片頭痛の薬とは?
大人の片頭痛に使われる薬は、
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
- アセトアミノフェン
- トリプタン製剤
- エルゴタミン製剤
などに分類できます。それぞれ効くしくみが違います。
たとえば、NSAIDsは頭痛以外にも腰痛や生理痛などに使われる一般的な痛み止めの薬です。アセトアミノフェンも一般的な痛み止めですが、NSAIDsに比べると痛みを抑える作用が弱い一方、副作用が比較的少なく、子どものかぜの症状などにも使われます。トリプタン製剤、エルゴタミン製剤は主に片頭痛に使われる薬です。
◆27件の研究から
ここで紹介する研究は、文献を集める方法で、子どもの片頭痛を治療する薬としてどんなものが研究されているかを調べたものです。
研究班は、文献データベースから、2016年2月までの研究データを集めました。17歳以下の未成年者を対象にした研究を採用することとし、12歳未満の子どもと、12歳から17歳までの青少年に分けて、効果と副作用のデータを解析しました。
27件の研究が集まりました。
◆アセトアミノフェン・エルゴタミンは効果不明
次の結果が得られました。
計162人の子どもを対象とする2件の小規模な研究において、イブプロフェンは2時間後に痛みがまったくなくなる効果が偽薬に勝ることが(リスク比1.87、95%信頼区間1.15-3.04)、低い質のエビデンス(不正確さによる)によって示された。アセトアミノフェンは80人の子どもを対象とする1件の小規模研究において偽薬に勝ることを示せなかった。トリプタンを薬物治療のクラスとして見たとき、偽薬と比べて痛みがまったくなくなる効果は[...]勝っていた。
経口ジヒドロエルゴタミンは、13人の子どもを対象とした1件の小規模研究において、偽薬に勝らなかった。
NSAIDsの一種であるイブプロフェンが有効というデータが見つかりました。
トリプタン製剤も有効とするデータがあり、治療の結果、偽薬でも治る割合に加えて12歳未満の子どもでは13人に1人、12歳から17歳の青少年では6人に1人程度の割合で2時間後の痛みをまったくなくすることができると見積もられました。
しかし、アセトアミノフェンは研究されていたものの、有効と言える結果ではありませんでした。
エルゴタミン製剤の一種であるジヒドロエルゴタミンについても、効果が確かめられないという結果が出ていました。
副作用について、トリプタンを使った12歳から17歳の青少年では、8人に1人程度の割合でトリプタンによる軽い副作用が起きると見られました。12歳未満の子どものデータからは副作用は見られませんでした。深刻な副作用が起こった例は報告されていませんでした。
子どもに使いやすい面があるアセトアミノフェンが子どもの片頭痛には効果不明など、実際に使ってみなければ予測しきれない結果もありました。多くの研究によって積み上げられた結果がこのようにまとめられることで、実際の治療をより確かなものにする役に立ちます。
執筆者
Drugs for the acute treatment of migraine in children and adolescents.
Cochrane Database Syst Rev. 2016 Apr 19.
[PMID: 27091010]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。