◆SSRIとSNRIは、緊張型頭痛の予防になるか?
ここで紹介する研究は、緊張型頭痛の予防のためにSSRIまたはSNRIの効果を調べた研究報告にこれまでどんなものがあるかを調査したものです。
抗うつ薬は三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬、SSRI、SNRIなどの細かい分類に分かれます。
緊張型頭痛の予防として実際に使われている抗うつ薬には、三環系抗うつ薬に分類されるアミトリプチリンなどがあります。
SSRIとSNRIは、三環系抗うつ薬よりもあとに登場した薬です。この分類にあたる抗うつ薬が緊張型頭痛の予防に有効かどうかも過去に研究があり、今回の研究ではこれまでにどのような研究がなされているかが調査されました。
研究班は文献データベースを検索して、関係する研究報告を集めました。
◆予防効果は確かめられず
関係する研究8件が見つかりました。それらの中で、SSRIに分類されるシタロプラム、セルトラリン、フルオキセチン、パロキセチン、フルボキサミンと、SNRIに分類されるベンラファキシンの効果が検討されていました。
そのうち6件の研究では、緊張型頭痛の症状が出る頻度に対してSSRIまたはSNRIの効果が検討されていました。結果は次のものでした。
8週のフォローアップ時点で、偽薬と比べて(2件の研究、n=127、平均差-0.96、95%信頼区間-3.95から2.03、I(2)=0%)またはアミトリプチリンと比べて(2件の研究、n=152、平均差0.76、95%信頼区間-2.05から3.57、I(2)=44%)、差は見られなかった。
SSRIまたはSNRIによって、治療開始から8週間後までの間で緊張型頭痛の頻度を少なくする効果は見られませんでした。頭痛の強さ・持続時間については次の結果がありました。
偽薬またはほかの抗うつ薬と比べて、頭痛の持続時間および強度に差は見られなかった。
頭痛の強さと持続時間を短くする効果は見られませんでした。
副作用について以下の結果が得られました。
SSRIまたはSNRIは概して三環系抗うつ薬よりも忍容性が高かった。しかし、これら2群は有害事象によって治療中止となった参加者の数(4件の研究、n=257、オッズ比1.04、95%信頼区間0.41-2.60、I(2)=25%)、その他の理由で治療中止となった参加者の数(オッズ比1.55、95%信頼区間0.71-3.38、I(2)=0%)において差がなかった。
三環系抗うつ薬よりもSSRIまたはSNRIのほうが副作用が少ないようでしたが、その結果として治療中止になる人の数には違いが見られませんでした。
頭痛予防に抗うつ薬を使うと言っても、SSRIとSNRIでは効果が確かめられていないという結果でした。緊張型頭痛の予防に三環系抗うつ薬を処方されたことのある人は、古いタイプの薬であることに疑問を感じるもしれませんが、その理由にはここでまとめられたような状況があります。
執筆者
Selective serotonin reuptake inhibitors (SSRIs) and serotonin-norepinephrine reuptake inhibitors (SNRIs) for the prevention of tension-type headache in adults.
Cochrane Database Syst Rev. 2015 May 1.
[PMID: 25931277]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。