2016.03.13 | ニュース

心筋梗塞を予言する「MACSルール」で見逃しがゼロに

782人の経過から

from Academic emergency medicine : official journal of the Society for Academic Emergency Medicine

心筋梗塞を予言する「MACSルール」で見逃しがゼロにの写真

心筋梗塞は急に起こるため、素早く診断して治療を始めることが救命のために重要です。ごく短時間でできる診察や検査だけで判定する「MACSルール」を使って、心筋梗塞を一人も見逃さず指摘できたことが報告されました。

◆8項目から危険度を計算

イギリスの研究班が、MACSルールの信頼性を検討しました。MACSルールは、次の8項目によって、30日以内に心筋梗塞や死亡などの事態に至る確率を予測する計算方法です。

  • 血液中の高感度トロポニンT
  • 血液中の心臓型脂肪酸結合蛋白
  • 心電図で虚血(心臓に血液が行き届かなくなっていること)の特徴が見られる
  • 目に見える発汗
  • 嘔吐
  • 収縮期血圧(最高血圧)が100mgHg未満
  • 狭心痛(胸が締め付けられるような痛み)の悪化
  • 右腕から肩に放散する(広がっていく)痛み

この8項目は、いずれもごく短時間のうちに判定できるものです。これらの結果から計算式を使って、30日以内の危険性の度合いが判定されます。危険の指標として、心筋梗塞、死亡、血流を再開させるカテーテル治療などが必要とされることをまとめて「MACE」と呼び、30日以内にMACEが起こる確率が計算されます。

MACSルールを提唱した研究からは高い診断能力が報告されています。

今回の研究では、1か所の施設で、研究期間中に急性冠症候群(心筋梗塞など)の疑いがあり救急を受診した18歳以上の患者782人が対象となりました。

MACSルールの判定に使う8項目を含め、実際の経過が記録され、MACSルールがどの程度経過を言い当てているかが検討されました。

 

◆MACE、心筋梗塞の見逃しゼロ

次の結果が得られました。

対象とされた782人の参加者のうち、78人(10.0%)にMACEが、61人(7.8%)に急性心筋梗塞が発生した。参加者のうち、133人(17.0%)は「非常にリスクが低い」と判定され、そのため即時の帰宅が適切と判断され、結果としてMACEまたは急性心筋梗塞の発生は0%だった。残る患者のうち、314人(40.2%)は「低リスク」の判定でMACEは2.2%、320人(40.9%)は「中等度のリスク」の判定でMACEは19.7%、15人(1.9%)は「高リスク」の判定でMACEは53.3%に起こった。30日時点でのMACEに対する感度は100%(95%信頼区間95.4%-100%)、急性心筋梗塞に対する感度は100%(95%信頼区間94.1%-100%)だった。

MACSルールによる判定とMACEの頻度に対応が見られました。

  • 「非常にリスクが低い」判定の人:発生なし
  • 「低リスク」判定の人:2.2%
  • 「中等度のリスク」判定の人:19.7%
  • 「高リスク」判定の人:53.3%

「非常にリスクが低い」判定の人で危険が見逃されていた例は1件もありませんでした。MACEと心筋梗塞は、100%が「低リスク」以上の判定で予言されていました。

 

胸の痛みを起こすほかの病気と区別して、緊急事態を素早く見抜くことは非常に重要です。こうした研究から判定基準を工夫することが、良い結果に結び付くかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

External Validation of the Manchester Acute Coronary Syndromes Decision Rule.

Acad Emerg Med. 2016 Feb.

[PMID: 26802433]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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