2016.03.18 | コラム

脳梗塞での回復期リハビリテーション病棟の役割と診療報酬上の条件

ほかの医療機関の役割とともに

脳梗塞での回復期リハビリテーション病棟の役割と診療報酬上の条件の写真
1. 脳梗塞治療における急性期病院の役割
2. 脳梗塞治療における回復期リハビリテーション病棟の役割
3. 入院期間に対して診療報酬で決められている条件
4. リハビリテーションの時間に対する診療報酬上の条件
5. 医療保険以外で利用できるリハビリテーション

脳梗塞治療では一人の患者が自宅に帰るまでに複数の医療機関を利用することも多く、発症からの時期ごとに医療機関の役割が分かれます。それぞれで入院期間やリハビリテーションの時間に対して診療報酬上の条件があります。

◆脳梗塞治療における急性期病院の役割

脳梗塞の治療では、多くの場合で一人の患者が経過とともに複数の医療機関に関わります。このため、医療機関が一般的な経過の中でどの時期に対応するかを区別する意味で、「急性期病院」「回復期リハビリテーション病棟」といった言葉があります。どちらも医療機関の役割を表す言葉です。

 

脳梗塞を発症して医療機関を受診すると、診断のうえただちに治療が開始されます。脳梗塞の発症直後の時期を急性期と言います。急性期の治療にあたる病院を急性期病院と言います。

急性期病院では、第一の目的は救命です。さらに全身状態を改善させ、脳のダメージや臓器のダメージを抑えるように治療が行われます。

脳梗塞は脳の一部で急に血流がなくなり、脳の組織が酸素や栄養の不足のため死滅してしまった状態です。死滅した脳組織は元には戻りません。そのため急性期の治療によって救命されても症状が残ってしまうことがあります。しかし、脳のダメージにともなう身体の機能障害などが回復する場合もあり、復職などの形で社会復帰に至ることもできます。リハビリテーションは回復を助けるための重要な要素です。

通常は急性期の治療と並行して、退院後の回復を見込んで、早期からリハビリテーションを開始します。重症度などにもよりますが、発症後24時間から48時間程度で寝返り・座位(座った姿勢)をとることなどの運動をするリハビリテーションが行われます。

治療が落ち着いてくると、回復期と呼ばれる時期が始まります。回復期には、急性期病院から回復期リハビリテーション病棟に転院するなどして、積極的なリハビリテーションが図られます。

 

◆脳梗塞治療における回復期リハビリテーション病棟の役割

回復期リハビリテーションとしては、移動、セルフケア、嚥下(飲み込み)、意思疎通などに障害が残った場合に、急性期から引き続いて専門的かつ集中的な訓練が行われます。

回復期リハビリテーション病棟に転院せず、療養型と呼ばれる病院に転院したり、自宅に退院したりしてリハビリテーションを続ける方法もあります。医師やリハビリテーションスタッフ、相談員などと相談を重ね次の行き先を決めていくことになります。

 

◆入院期間に対して診療報酬で決められている条件

日本では、国民皆保険が実現していて、医療機関を受診する際に保険証を提示し、保険診療を受けることができます。そして、かかった医療費全体の一部を支払うという仕組みになっています。この時にかかる金額は診療報酬点数として全国一律の基準が決められています。診療報酬の中に、回復期リハビリテーション病棟入院料という規定があり、この点数を数えることができるかどうかによって、医療機関が対応できることにも条件がつくことになります。

 

まず急性期病院から回復期リハビリテーション病棟に転院が可能となるには条件があります。それは、発症または手術から2か月以内ということです。つまり、急性期病院で治療を行うも、2か月間全身状態が落ち着かず、まだ継続した治療が必要と医師に判断される場合、2か月を過ぎた時点で回復期リハビリテーション病棟への転院が出来なくなります。

発症または手術から2か月というのは、例えば脳梗塞を発症し、急性期病院に入院している間に新たに脳梗塞あるいはその他の疾患を発症、または手術などを行うと、その日が起算日(発症日)となります。つまり、最初の発症からは2か月以上経過していても、新たに発症したその日から2か月以内であれば回復期リハビリテーション病棟への転院が可能ということです。

この条件は、平成20年厚生労働省告示62号別表第9にある「回復期リハビリテーションを要する状態及び算定上限日数」の定義の中で、「脳血管疾患」などに対しては「発症又は手術後二か月以内に回復期リハビリテーション病棟入院料の算定が開始されたものに限る。」とした記載によるものです。

同じ条文の中で、算定上限日数、つまり保険を使い続けることのできる日数の上限が「算定開始日から起算して百五十日以内」と決められています。このことから、脳梗塞で回復期リハビリテーション病棟に入院できる期間は150日以内が原則となります。

ただし「高次脳機能障害を伴った重症脳血管障害」に対しては別に決められた「算定開始日から起算して百八十日以内」という基準があります。つまり脳梗塞などの重症であって、失語症・失行症・失認症などの高次脳機能障害に分類される症状が現れている人では、150日ではなく180日が入院期間の上限となります。上限はあくまで最長で180日間入院できるということであり、入院の必要がなくなれば180日を待たず退院することになります。

 

場合によっては、150日・180日という制限を超えてリハビリテーションを続けることもありますが、誰にでも当てはまるというわけではなく、回復の具合などを総合して個々の医療機関と患者や家族の意志により判断することになります。

 

◆リハビリテーションの時間に対する診療報酬上の条件

リハビリテーションは、1日に実施できる時間も診療報酬で決められています。回復期リハビリテーション病棟に入院中の患者で、疾患別リハビリテーション料は「1日合計9単位」まで算定できるとされていて、1単位は20分を意味するので、換算すると1日あたり3時間までリハビリテーションができるということになります。

多くの人で退院後にもリハビリテーションが有効ですが、その方法として外来でリハビリテーションを継続することもできます。

外来でのリハビリテーションは、入院中に比べてリハビリテーションを受けられる時間が少なくなります。150日または180日の上限を超えてリハビリテーションを行った場合は、1か月あたり13単位(260分)まで算定できます。

また、治療を継続することにで、状態の改善が期待できると医学的に判断される場合(該当する疾患が定められている)には、1日6単位(2時間)のリハビリテーションを受けることができます。

 

◆医療保険以外で利用できるリハビリテーション

退院後は、医療保険のリハビリテーションから介護保険のリハビリテーションを利用するケースもあります。介護保険では、通所リハビリテーション・訪問リハビリテーションなどリハビリテーションが受けられるサービスもあります。

 

医療保険で行えるリハビリテーションには限度が決まっていますが、介護保険サービスをはじめとしてリハビリテーションが必要な方に対する社会資源が用意され、多様な需要に応えることが目指されています。

注:この記事は2016年3月18日に公開しましたが、2018年2月23日に編集部(大脇)が更新しました。

執筆者

中嶋 侑

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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