指が曲がったまま伸ばせない「デュピュイトラン拘縮」、細菌から採った酵素が改善

デュピュイトラン拘縮は、手のひらに小さいこぶができて指が伸ばせなくなるなどの症状を特徴とする、原因不明の病気です。治療には手術のほか、コラゲナーゼという酵素の注射があります。コラゲナーゼについて、これまでの研究結果がまとめられました。
◆酵素で異常な組織を分解
デュピュイトラン拘縮の代表的な治療に、指の動きを妨げている異常な組織を取り除く手術があります。しかし、手術で一度は改善しても再発が多いこと、また手術により周りの組織を傷つける可能性があることが知られています。
コラゲナーゼは皮膚やその下の組織を作るコラーゲンを分解する
研究班は、過去の文献を検索して、デュピュイトラン拘縮の治療としてコラゲナーゼまたは手術の効果と副作用を調べた研究を集め、結果をまとめました。
◆効果はあるが、手術に勝るかは不明
次の結果が得られました。
コラゲナーゼで治療された参加者は、偽薬で治療された参加者に比べて、
拘縮 の有意 な減少と、可動域の有意な増加を経験した。コラゲナーゼで治療された参加者はまた、有意に多くの有害事象を経験したが、その大部分は軽度から中等度だった。コラゲナーゼ群で4件の深刻な有害事象が観察された。腱断裂が2件、滑車断裂が1件、複合局所疼痛症候群 が1件あった。再発率はコラゲナーゼでは0%(90日時点)から100%(8年時点)、手術では0%(筋膜切除から2.7年時点)から85%(経皮的針筋膜切開から5年)だった。
コラゲナーゼの治療を受けた人で、症状の改善が見られました。再発はコラゲナーゼ治療後90日まで0%だったとした報告と、治療後8年までに100%再発したとした報告がありました。手術では手術後5年までに85%で再発したとした報告がありました。
コラゲナーゼの深刻な副作用として、腱断裂などが起こった例が報告されていました。
研究班は「コラゲナーゼは偽薬よりも有意に優れていた。コラゲナーゼが手術治療よりも臨床的に良いか悪いかを示す根拠はなかった」とまとめています。
コラゲナーゼは特定の条件のもとで、日本でも承認されています。デュピュイトラン拘縮は治療が難しい病気ですが、コラゲナーゼが役に立つ場面もあるかもしれません。
執筆者
Collagenase clostridium histolyticum for the treatment of Dupuytren's contracture: systematic review and economic evaluation.
Health Technol Assess. 2015 Oct
[PMID: 26524616]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。