◆酒さ、テトラサイクリン系抗菌薬との関連を検証
この研究は、炎症性腸疾患にともなって指摘されることがある、「酒さ」という皮膚の炎症による症状と、テトラサイクリン系抗菌薬(抗生物質)の使用に注目しました。
アメリカで行われた追跡調査の結果のデータを使い、96,314人の対象者のうちで、酒さがあるかどうか、またテトラサイクリン系抗菌薬を一度でも使ったことがあるかどうかと、その後の炎症性腸疾患の関連を解析しました。
◆酒さでクローン病増加、テトラサイクリン系抗菌薬でも
次の結果が得られました。
酒さは潰瘍性大腸炎のリスクと関連しなかった。対して、酒さは以後のクローン病のリスク増加と有意に関連し(ハザード比2.20、95%信頼区間1.15-4.18)、特に診断から長期間を経た酒さで関連が強く見えた(Ptrend=0.01)。テトラサイクリンの使用はクローン病(ハザード比1.56、95%信頼区間1.09-2.24)および潰瘍性大腸炎(ハザード比1.34、95%信頼区間1.00-1.80)のリスク増加と関連した[...]。
酒さがあった人では、その後のクローン病の発症が多くなっていました。テトラサイクリン系抗菌薬を使ったことがある人は、クローン病、潰瘍性大腸炎がともに多くなっていました。
この研究の方法では、酒さやテトラサイクリン系抗菌薬が炎症性腸疾患の原因かどうかは断定できません。炎症性腸疾患に至る手前の段階で酒さや感染症が起こっていたなどの可能性もあわせて検討する必要があります。
ここで見られた関連を説明する観点が、炎症性腸疾患の原因解明や予防に向けた新しい研究につながるかもしれません。
執筆者
Rosacea, Use of Tetracycline, and Risk of Incident Inflammatory Bowel Disease in Women.
Clin Gastroenterol Hepatol. 2015 Sep 25 [Epub ahead of print]
[PMID: 26404866]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。