◆ステント治療後の再血栓・再狭窄
今世紀に入り、急性冠症候群(不安定狭心症や急性心筋梗塞)で循環器専門病院にはこびこまれると薬剤溶出ステント(DES)による治療をされることが増えました。
ステント治療では狭くなった血管を広げることができます。しかし、治療後にまた詰まる(再血栓・再狭窄)リスクがなくなるわけでなく、長期間血が固まりにくくなる薬(抗血栓薬)をのむ必要があり、再血栓・再狭窄を減らすことが課題となっています。
DESはこの課題に対して工夫されたステントです。DESの材料には再血栓・再狭窄を防ぐ薬が含まれていて、DESを血管の中に留置すると、この薬が少しずつ溶け出して作用します。
◆新しい生体吸収ステント
現在、DESに使う薬をさらに改善する方向と、全く新しい発想の「ステント」を目指す方向があります。
生体吸収スキャフォールド(支持枠)は、一定期間はDESのように働き、血管が自分で修復できた段階で役目を終えて身体に吸収されるというもので、長く期待されているステントテクノロジーですが、進化は劇的ではありませんでした。現在、いくつかの技術がありますが、ポリマーベースのスキャフォールド(BVS)が先行しています。
◆2,008人の狭心症患者で臨床試験
研究班は狭心症の患者さん2,008人を対象に、BVSと、同じ薬を溶出する非吸収性DESを比較するランダム化比較試験を行いました。
◆BVSがDESに非劣性
1年標的病変不全(治療しようとした部分が治療不十分)はBVSが非劣性で、心臓死・標的血管心筋梗塞(ステントを入れた血管で心筋梗塞)・虚血性標的病変再再血行再建(治療不十分な部分を再治療)発生率に有意差はありませんでした。留置後1年以降のステント血栓発生率は、BVSで1.5%、DESで0.7%に見られましたが、統計的には違いが確かめられませんでした。
研究班はBVSがDESに非劣性としています。別の研究で、日本からは同等とする結果も出ています。このように、今回の結果は生体吸収ステントが劇的によい、というものではなく、論争は続きそうですが、他にも様々な材料や方法が試されており、将来生体吸収ステントが従来のステントを置き換える可能性もあります。
執筆者
Everolimus-Eluting Bioresorbable Scaffolds for Coronary Artery Disease.
N Engl J Med. 2015 Oct
[PMID: 26457558] The New England Journal of Medicine※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。