2015.11.01 | ニュース

抗凝固薬の危険性にブレーキをかけられるか?プリズバインド®の効果と副作用

コホート研究の中間解析

from The New England journal of medicine

抗凝固薬の危険性にブレーキをかけられるか?プリズバインド®の効果と副作用の写真

ダビガトランは血液を固まりにくくし、血の塊が原因になる脳梗塞などを予防するために使われますが、出血を起こすリスクもあります。この効果を中和するイダルシズマブ(商品名プリズバインド)で緊急時に対処する研究が行われました。

研究班は、ダビガトランを使っていて深刻な出血が起こった人と、緊急手術が必要になった人を対象として、イダルシズマブの注射を使ったときに血液が固まる機能が正常になったかを調べました。

合計90人のデータが解析されました。

 

次の結果が得られました。

ベースラインで希釈トロンビン時間の上昇が見られた68人の患者およびエカリン凝固時間の上昇が見られた81人のうちで、最大中和率の中央値は100%(95%信頼区間100-100)だった。イダルシズマブは試験結果を患者の88%から98%において正常化し、この効果は数分のうちに起こることが示された。

イダルシズマブ使用後72時間以内に、抗凝固薬が再開されていなかった患者1人において、1件の血栓性イベントが発生した。

血液が固まる機能の検査2種類が、イダルシズマブを使ったとき、88%から98%の人で正常になりました。イダルシズマブによる変化は、注射から数分以内で起こることが観察されました。

副作用について、イダルシズマブは抗凝固薬の効果を抑えるため、血の塊が血管に詰まってしまうこと(血栓症)が懸念されますが、実際に1人の人で血栓症が発生しました。

 

抗凝固薬の使用中に出血が起こると、止血しにくく、深刻な事態に及ぶことがあります。薬の効果をコントロールする方法があれば、より安全に治療することにつながるかもしれません。

 

イダルシズマブを有効成分とする製剤プリズバインドは、日本で9月28日に「生命を脅かす出血又は止血困難な出血の発現時、重大な出血が予想される緊急を要する手術又は処置の施行時におけるダビガトランの抗凝固作用の中和」を効能・効果として承認されました。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Idarucizumab for Dabigatran Reversal.

N Engl J Med. 2015 Aug 6

[PMID: 26095746]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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