◆針付縫合糸とは?
針付縫合糸とは、その名の通り縫合糸に針が付いているものです。針のお尻部分に、尻尾のように縫合用の糸がくっついていて、包装から出したらそのまま縫合に使用することができるというものです。臨床の現場では、針糸(はりいと)などと呼ばれ、針と糸が別々になっているものよりも頻繁に使われています。針と糸が別々になっていて組み合わせて使うものと比較すると、針に糸を付ける手間が省けるというメリットと、針と糸の段差が少ないため、運針の時に周囲の組織を傷つけにくいというメリットがあります。
針付縫合糸は、特徴で以下の2種類に大別できます。
◆針が取れるもの
針のお尻に付いた糸を引っ張ると、針と糸の接合が外れて取れるものがあります。この特徴を「デタッチ」や「コントロールリリース」といい、結節縫合という縫い方に適しています。結節縫合とは、ひと針縫ったらその都度結紮(糸を結ぶ)をするという縫い方です。基本的にはひと針ごとに糸結びをするため、約45cmほどの短めの糸が付いています。
針が簡単に取れることにより、ひと針縫う→糸を引っ張って針を取る→糸を結ぶ という流れがよりスムーズになります。
また、基本的にひと針ごとに針は使い捨てになるため、毎回新しい切れ味の良い針を使用することができるというメリットもあります。
◆針が取れないもの
デタッチの針付縫合糸と違って、糸を引っ張っても針が外れないものもあります。これは連続縫合という縫い方に適しています。連続縫合とは、複数針縫い続け、最後に糸を結ぶという縫い方です。お裁縫で例えると、かがり縫いとかまつり縫いなどと同じような方法になります。
連続して縫っていくため、60cm、70cm、90cmなどの、長めの糸が付いています。糸の長さは縫合する長さに合わせて決められます。
◆針糸の使い分け
以前同シリーズの第3弾や第4弾で説明したように、針や糸にも様々なサイズや素材があり、針付縫合糸にも様々なサイズや素材のものがあります。では、どのように使い分けられているのでしょうか。
閉創(傷を閉じること)を例に挙げて説明します。閉創と一言で言っても、様々な方法があります。例えば結節縫合でひと針ずつ縫合する場合もあれば、連続縫合や皮下埋没縫合(皮膚に糸が出ない縫合方法)など、他にも様々な方法があります。縫合する場所の組織の厚さや特徴、傷の状態、患者さんの状態など、様々な状況を考慮して縫合方法や材料が選択されます。推奨される選択はもちろんありますが、「ここには絶対この縫合糸で、絶対この縫い方」というような決まりは基本的にはなく、臨機応変に対応されます。
因みに、縫合方法や材料の違いによって術後の処置や対応も変わります。例えば、非吸収糸での皮膚縫合であれば抜糸が必要になりますが、吸収糸での皮下埋没縫合であれば抜糸は不要となります。他にも傷の被覆や消毒など、毎日の処置が違ってくる場合もあります。医師や看護師の指示を守って、正しい傷の管理をすることが、早くきれいに治るために大切です。
執筆者
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。