先天性サイトメガロウイルス感染症は子どもの神経にどんな影響を与えるのか?

サイトメガロウイルス(CMV)は妊娠中の母親から胎児に感染し、流産などの原因になりうることが知られています。CMVに感染した子どもに現れやすい神経症状についての研究が行われました。
◆サイトメガロウイルスに感染した子どもが対象
この研究は、次の子どもを対象に行われました。
この後ろ向き研究は、
生まれつきCMVに感染し、感覚神経障害があって、聴力と前庭機能(体の平衡を保つ機能)の検査を受けた52人の子どもが対象となりました。難聴および前庭機能障害の頻度とそれらの関連が調べられました。
◆90%以上に難聴・前庭機能障害あり
次の結果が得られました。
48人の子ども(92.3%)に難聴および前庭機能障害があった。
先天性CMV感染は、神経学的障害および前庭機能障害と
相関 して、姿勢の発達に悪い影響があった。前庭機能障害は聴力障害と有意 に関連したが、それらの重症度は一致を示さなかった。
対象となった子どもの92.3%に、難聴と前庭機能障害がありました。難聴があることと、前庭機能障害があることには統計的な関連が見られました。
この研究では聴力と前庭機能の詳しい検査を受けた子どもだけが対象とされているため、もともと難聴などが疑われていた場合が多かったと考えられます。したがって、サイトメガロウイルスに感染した子ども全体の中では、難聴や前庭機能障害の頻度はこれより低い可能性があります。
しかし、ここで多くの対象者が集められたこと、検査を受けたときに異常が見つかる割合が高かったことは、サイトメガロウイルスによる難聴・前庭機能障害が決して無視できない頻度で起こりうることの例と言えるかもしれません。
執筆者
Disorders in Children With Congenital Cytomegalovirus Infection.
Pediatrics. 2015 Sep 7 [Epub ahead of print]
[PMID: 26347442]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。