2015.09.11 | ニュース

がん細胞をキャッチする網、転移を発見

乳がんの転移を早期に検出
from Nature communications
がん細胞をキャッチする網、転移を発見の写真
(C) Ljupco Smokovski - Fotolia.com

がん細胞がほかの臓器に転移する前に、血液に乗って循環していることがあると考えられています。循環するがん細胞を網のような「足場」で捕らえ、転移が見分けられるよりも早く発見する方法が研究されました。

◆乳がんを移植したマウスで実験

研究班は、マウスに人間の乳がんの細胞を移植してがんを成長させ、さらに大きさ5mmの円盤状に加工した「足場」を移植しました。

「足場」にがん細胞が付着するかどうか、またその細胞を検査で見分けられるかが検討されました。

 

◆転移の量が少なく、早期に発見可能

マウスの体から取り出した「足場」を調べたところ、がん細胞が付着していることが確かめられました。

「足場」を移植したマウスの肺にがん細胞が転移しているかを調べたところ、「足場」を移植しなかったマウスと比べて、見つかったがん細胞の数が1/10程度に少なくなっていました。肝臓でも同様の傾向が見られました。

さらに、「足場」にがん細胞が見つかるのは肺や肝臓に転移が見つかるよりも早く、ISOCTという光学的検査によって、マウスの体を切り開くことなく、「足場」に付着したがん細胞を見分けられました

これらの結果から、研究班は「再発のリスクがある患者には、初期治療の終了後に足場インプラントを置くことで、転移病変を最も早い段階で同定し、疾患負荷が低いうちに治療を開始することを可能にする可能性がある」と結論しています。

 

人間でも同様の結果が得られるかは今後の研究に委ねられます。転移を発見して治療し、結果の改善につなげることができるかどうか、期待がかかります。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

In vivo capture and label-free detection of early metastatic cells.

Nat Commun. 2015 Sep 8

[PMID: 26348915]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。