◆5年間の治療法を比較
研究班は、閉経後の女性を対象として、早期乳がんのうち、アロマターゼ阻害薬やタモキシフェンの効果が得られやすい「エストロゲン受容体陽性」というタイプのものに対する治療効果を調べました。過去の研究から、5年の治療期間について以下の3種類の治療法のうち2種類を比較したものを選んで、データを集めました。
- 5年間アロマターゼ阻害薬で治療する
- 最初の2年から3年の間はタモキシフェンで治療し、以後アロマターゼ阻害薬で計5年間治療する
- 5年間タモキシフェンで治療する
得られたデータを統計解析し、乳がんの再発率、乳がんによる死亡率などをそれぞれの治療法について比較しました。
◆アロマターゼ阻害薬が全生存率改善
次の結果が得られました。
3種類の比較すべてを統合すると、再発のリスク比は治療法が違う期間についてアロマターゼ阻害薬を支持し(リスク比0.70、0.64-0.77)、以後は有意差がなかった(リスク比0.93、0.86-1.01、2p=0.08)。乳がんによる死亡率は治療法が違う期間(リスク比0.79、0.67-0.92)、その後(リスク比0.89、0.81-0.99)の両方、および複合させた全期間(リスク比0.86、0.80-0.94、2p=0.0005)において減少した。全死因死亡率もまた減少した(リスク比0.88、0.82-0.94、2p=0.0003)。
アロマターゼ阻害薬を使っていた期間には、タモキシフェンを使っていた期間に比べて、乳がんの再発が少なくなっていました。アロマターゼ阻害薬を使った人のほうが、タモキシフェンを使った人よりも全期間にわたって乳がんによる死亡率が低く、すべての死因を合わせた死亡率も低くなっていました。
乳がん以外について次の結果が見られました。
タモキシフェンよりもアロマターゼ阻害薬に対して、子宮体がんが少なかった(10年間の発症率がタモキシフェンで1.2%、アロマターゼ阻害薬で0.4%、リスク比0.33、0.21-0.51)が、骨折は多かった(5年間のリスクがタモキシフェンで5.5%、アロマターゼ阻害薬で8.2%、リスク比1.42、1.28-1.57)。乳がん以外での死亡率は類似していた。
タモキシフェンを使ったときよりもアロマターゼ阻害薬を使ったときのほうが子宮体がんが少なくなっていましたが、骨折はアロマターゼ阻害薬を使ったときのほうが多くなっていました。乳がん以外の死因による死亡率には違いが見られませんでした。
アロマターゼ阻害薬は乳がんの治療において重要な役割を果たしています。適切な使い方がこのように検証されることで、全体としてより高い効果を期待できるようになることが目指されています。
執筆者
Aromatase inhibitors versus tamoxifen in early breast cancer: patient-level meta-analysis of the randomised trials.
Lancet. 2015 Jul 23 [Epub ahead of print]
[PMID: 26211827]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。