進行した皮膚がんに効果あり、新薬2剤併用

皮膚がんには基底細胞癌、扁平上皮癌、悪性黒色腫の3種類が挙げられますが、その中でも最も治りにくく死に至りやすいのが悪性黒色腫です。アジア人よりも白人に多く発症します。初期の悪性黒色腫であれば手術で取り切ることができますが、進行してリンパ節やほかの臓器に転移してしまうと非常に治療が難しいがんです。この治療に新しい2種類の薬の併用を試したところ、一方だけを使うよりも高い効果が得られました。
◆悪性黒色腫の治療薬、ダブラフェニブとトラメチニブとは
多くの悪性黒色腫はBRAF遺伝子という遺伝子の変異が、原因の一つと考えられています(今回の研究の対象となった947人の患者さんのうち74%でこの変異が見つかったようです)。BRAFの作用を抑える
◆ダブラフェニブとトラメチニブの併用療法とダブラフェニブ単独療法を比較
この研究では、BRAF阻害薬のダブラフェニブとMEK阻害薬のトラメチニブの両方で治療したグループ(併用群)とダブラフェニブ単独で治療したグループ(単独群)を均等に、ランダムにわけ、計423人を治療しました。
Stage IIICもしくはStage IVといった進行した悪性黒色腫で、かつBRAF 遺伝子に変異のある場合が研究の対象となりました。期間は、2012年5月から11月にかけて患者さんの最初のチェックを行い、2015年1月までフォローしました。
◆ダブラフェニブとトラメチニブを両方使った方が治療の効果が高い
- 生存期間の中央値は併用群で25.1ヶ月、単独群で18.7ヶ月
- 治療開始から1年経った時点での生存率は併用群で74%、単独群で68%
- 治療開始から2年経った時点での生存率は併用群で51%、単独群で42%
- 悪性黒色腫が進行することなく生存した中央値は 併用群で11.0ヶ月、単独群で8.8ヶ月
といずれも併用群で優れていました。
また、副作用の出現した頻度は併用群で87%、単独群で90%であり、併用群で最も多かった副作用が発熱、単独群で最も多かった副作用が過角化でした。
このように、ダブラフェニブ単独よりもダブラフェニブとトラメチニブの併用療法は効果が高く、治療法の少ない進行した悪性黒色腫に対して有効と見られました。
◆今後の展望
ダブラフェニブとトラメチニブの併用療法は、2014年1月に米国で承認されています。
体のガンに対する
今後、長期間それぞれの薬で治療した場合の効果を比較して、どの治療法が一番優れているかを比較する研究が重要になりそうです。
執筆者
Dabrafenib and trametinib versus dabrafenib and placebo for Val600 BRAF-mutant melanoma: a multicentre, double-blind, phase 3 randomised controlled trial.
Lancet. 2015 May 29 [Epub ahead of print]
[PMID: 26037941]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。