2015.06.20 | ニュース

抗生物質の代わりに漢方薬

女性の再発性尿路感染症に対する効果のメタアナリシス

from The Cochrane database of systematic reviews

抗生物質の代わりに漢方薬の写真

女性によく起こる「尿路感染症」は、腎盂腎炎など、尿が作られて排出されるまでの通り道にある臓器に細菌が感染して起こる病気の総称です。主な治療は抗菌薬(抗生物質)ですが、治しても感染・発症を繰り返すこともあります。抗菌薬を長期間使い続けることには、副作用や、細菌が薬の効かない耐性菌に変わってしまうことが懸念されます。漢方薬を使って治療を試みた数件の研究の検証から、有効性を示唆する結果が出ました。

◆漢方薬の研究を検証

研究班は、論文データベースを検索し、再発性尿路感染症に対して漢方薬を含む治療の効果を調べた研究を集め、検証したうえデータを統合して統計解析しました。

 

◆単独でも効果あり、抗菌薬と併用すると効果増

解析から次の結果が得られました。

合計542人の女性を対象とした7件のランダム化対照研究を採用した。そのうち5件は閉経後の女性(56歳から70歳の422人)を対象としていた。すべての研究にバイアスの高いリスクがあると評価した。

計282人の女性を対象とし、漢方薬と抗菌薬を比較した3件の研究の解析では、漢方薬は急性尿路感染症に対して抗菌薬よりも高い率で効果を示し(リスク比1.21、95%信頼区間1.11-33)、再発性尿路感染症の率を減らした(リスク比0.28、95%信頼区間0.09-0.82)。120人の女性を対象として漢方薬と抗菌薬の併用を抗菌薬のみの治療と比較した2件の研究の解析では、漢方薬の併用は急性尿路感染症に対してより高い率で効果を示し(リスク比1.24、95%信頼区間1.04-1.47)、研究開始後6か月間の再発性感染症の率を減らした(リスク比0.53、95%信頼区間0.35-0.80)。

条件に合う研究は7件ありましたが、いずれもデータの取り方が偏っている(バイアスがある)恐れが強いと見られました。これらのデータの中では、漢方薬だけの治療で抗菌薬だけの治療よりも、また漢方薬と抗菌薬の併用で抗菌薬だけの治療よりも、効果が現れる割合が多くなっていました

研究班は、この結果が漢方薬の効果を示唆することを認めつつ、「しかし、採用した研究が少数であり、質もよくないことは、女性の再発性の尿路感染症に対して、抗菌薬との併用にせよ単独にせよ、漢方薬を使うことについての頑健な結論を引き出すことはできないことを意味する」と注記しています。

 

はっきりとはわからないまでも、漢方薬に尿路感染症を治療する効果があるらしい結果が見つかりました。もし漢方薬で細菌を退治できるなら、ほかのさまざまな感染症の治療に使うことも検討できるかもしれず、広い範囲の話題に関わります。

ただし、漢方薬にも副作用がないわけではなく、また漢方薬に細菌を殺す作用があるとすれば、漢方薬に対する耐性菌が今後現れることもないとは言えません。さらに、漢方薬の使い方は抗菌薬などとは違っているため、処方する医師が習熟することも必要です。有効だったとして、抗菌薬治療とどのように使い分けるかは、さまざまな面から検討される必要がありそうです。

なお、漢方薬に関心のある方はこちらの記事もあわせてご覧ください。

「漢方薬でダイエットできる??」

http://medley.life/news/item/556442af6a03a70e017d1517

「関節リウマチの治療薬に漢方薬を足すと効果増強?」

http://medley.life/news/item/555ac32159747e1701e63377

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Chinese herbal medicine for treating recurrent urinary tract infections in women.

Cochrane Database Syst Rev. 2015 Jun 4 [Epub ahead of print]

 

[PMID: 26040964]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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