2015.06.14 | ニュース

母親の自尊心が高いと子どものADHDの症状が少なかった

メキシコのデータを解析

from The Journal of pediatrics

母親の自尊心が高いと子どものADHDの症状が少なかったの写真

注意欠如・多動性障害(ADHD)の原因には遺伝的要因と、環境要因の両方が関わっていると考えられています。対策のためには子どもが育つ環境と症状の関連を明らかにすることが役立つかもしれません。ここで紹介する研究では、母親の自尊心、また出生前に体に取り込まれた鉛の量というふたつの要因が、ADHDの症状と関連していたことが報告されています。

◆メキシコの192組の親子が対象

研究班は、メキシコで行われた過去の研究から、192組の母親と子どもについての情報を取り出し、臍帯血や母親の骨から測った鉛の量と、質問票の回答からまとめた母親の自尊心、また子どものADHDの症状の関連を統計解析しました。

 

◆自尊心は症状減と関連

解析から次の結果が得られました。

家族の経済的状態、婚姻状態、母の学歴と年齢、子どもの年齢と性別、また子どもの症状評価時点での血中鉛濃度を調整したのち、母の自尊心が向上することは子どもの注意欠如行動の減少と関連していた。この関連は出生前の鉛曝露が多かった群(百分位で25-100)と比較して、鉛曝露が少なかった群(百分位で1-25)でより強かった(出生前鉛曝露と母の自尊心水準の交互作用に対してP<0.10)。

母親の自尊心が高い親子では、子どものADHDの症状のうち、注意欠如行動が少ない傾向がありました。また、対象者を鉛の量が多かったグループと少なかったグループに分けたところ、鉛の量が多かったグループでは、母親の自尊心と注意欠如行動の関連が弱くなっていました

研究班は、「幼児期に母親の自尊心が高い子どもは注意欠如行動を起こしにくかった。出生前の鉛曝露はこの防護的な効果を弱める働きがあるかもしれない」とまとめています。

 

この研究では過去のデータを解析する方法をとっているため、鉛の量、母親の自尊心とADHDの症状に共通した原因がほかにある可能性を否定できません。鉛に触れる機会が多い家庭にはどんな特徴があったのか、背景をもっと詳しく知ることができれば、より広い視野が開けるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Prenatal Lead Exposure Modifies the Impact of Maternal Self-Esteem on Children's Inattention Behavior.

J Pediatr. 2015 Jun 2 [Epub ahead of print]

 

[PMID: 26047683 ]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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