2015.06.03 | ニュース

ADHDの子の脳では何が起こっているのか

「報酬」に対する前頭葉線条体回路の活性化
from Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry
ADHDの子の脳では何が起こっているのかの写真
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注意欠如・多動性障害 (ADHD) とは、日常生活で集中力を欠いたり、衝動的行動が目立ったり、授業中にうろうろしてしまうなどの多動性を特徴とする、小児精神科の病気です。従来の研究では、「作業記憶」や「反応抑制」などの機能に問題があることが原因ではないかとされていました。しかし、今回の研究では、「報酬」に対する脳の活動に注目することで、ADHDの原因に迫れるのではないかという結果が示されています。

◆ADHDはどんな病気?

ADHDは全世界で5%程度の子どもが罹患していると言われています。遺伝性が強く、ADHD患者の兄弟姉妹がADHDに罹患する危険性は、通常の2~8倍高いとされています。治療方法としては、生活環境を整えたり、心理療法を行ったり、薬物療法を行ったり(アトモキセチンやメチルフェニデート)といった選択肢があります。

 

◆健常者、ADHD患者、ADHD患者の兄弟姉妹で脳の反応を比較

筆者らは以下の方法で、思春期、青年期のADHD患者の脳の活動を、その兄弟姉妹と、またADHDでない健常者と比較しました。

150人のADHD患者、その兄弟姉妹でADHDに罹患していない92人、108人の健常人に対して、fMRIという検査を用いて報酬に対する反応を比較した。

このように、健常者、ADHD患者、その兄弟姉妹の脳の活動を「fMRI」という画像検査を使って比較することで、その原因となる部位や家族性を解析しようとしています。

 

◆前頭葉線条体回路の活性化がADHD患者に強く見られた

実験の結果、ADHD患者には次のような特徴がありました。

ADHD患者においては、「報酬に対する期待」を持っているときには、前帯状回、前前頭葉、小脳などでより強い活性化が見られた。「報酬を獲得」する際には、前頭葉眼窩回や腹側線条体、後頭葉などでより強い活性化が見られた。これらは健常者と比較して統計学的に有意に増加していた。

ADHD患者の脳では、前帯状回や腹側線条体という、報酬に関わると考えられている部分の活動が、健常者よりも強い傾向がありました。詳しくは「今後、さらなる追加実験を行っていく必要がある」と締めくくられています。

ADHDの根本的なメカニズムを調べたことで、新たな薬物療法や心理療法の開発につながる可能性を秘めており、非常に興味深い論文です。例えば、報酬系を司っているドーパミンなどの物質をコントロールする薬剤治療ができる可能性が有ります。また、報酬に対する適切な反応を教え込むことが、ADHDの治療につながる可能性が有ります。ADHD患者とその兄弟姉妹の反応の違いをさらに詳しく解析すれば、ADHDの原因解明にまた一歩近付けるかもしれません。

執筆者

石田 渉

参考文献

Increased neural responses to reward in adolescents and young adults with attention-deficit/hyperactivity disorder and their unaffected siblings.

J Am Acad Child Adolesc Psychiatry. 2015 May;54(5):394-402

[PMID: 25901776] http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25901776

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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