2015.06.12 | コラム

手術の時には指輪を外しましょう!

手術室看護師が解説する術前準備

手術の時には指輪を外しましょう!の写真

結婚指輪など、外すことなくずっと付けっぱなしの方も多くいると思います。その指輪、外れますか? 手術を受ける時、指輪を始め、アクセサリーは全部外す必要があります。 その理由について、指輪にスポットを当て、元手術室看護師が解説します。

◆理由その①:手術中はむくむため!

手術を受ける場合、大半の症例が点滴を入れながら手術を行います。点滴を入れる目的は単なる脱水予防だけでなく、容態が急変した時に迅速に薬を静脈注射できるための経路として使用したり、入れる点滴の種類によって体内の電解質バランスを調節したり、出血が多い場合の輸血の経路として必要なのです。

指輪の話をしているのに、なぜいきなり点滴の話をしたか疑問に思っている方もいらっしゃるでしょう。これが、重要な関係があるのです。

手術の部位や内容により程度は異なりますが、術中は血液・浸出液(血管から染み出した水分のような物)・リンパ液・不感蒸泄(汗など目に見えず蒸発する体液)・尿など、多くの体液が体外に排出されます。この体液の排出が続いてしまうと脱水の状態になってしまい、様々な悪影響を及ぼします。これを予防するために、術中は体液の排出以上に輸液(点滴・輸血)を行います。併せて、術中は患者自ら体を動かすことがでず、静脈の流れが滞りやすい状態にあります。

これらの原因により、術中の患者さんはとても体がむくみやすい状態にあります。手の指にも同じことが言え、普段ジャストサイズの指輪でも、むくむときつくなり、指を締め付けて血流障害を起こす恐れがあります。ひどい場合には血が止まって紫色になったり、この状態が長時間続くと、最悪の場合指が壊死してしまうことだって起こり得るのです。

 

◆理由その②:電気メスを使用するため!

手術中は、手術の部位や種類によりますが、電気メスを使用することがあります。電気メスとは、その名の通り”電気のメス”で、電気の熱で体の組織を切ったり焼いたりする道具で、大きな手術には欠かせないアイテムです。医療もののドラマで見たことがある方も多いのではないでしょうか。

指輪の話をしているのに、今度は電気メスの話?と、また思った方もいらっしゃるでしょう。これまた重要な関係があるのです。

電気メス使用時は、体内に電気が流れますが、電気を体外に逃がすために、体に”アース(対極板)”を貼り、体内に電気が溜まらないようにします。しかし、体に金属の指輪が接触していてこれが少し浮いた場合、この隙間に電流が発生して火花が起こり、やけどを起こす可能性があるのです。

 

要するに、血液の流れの妨げの原因になるから、やけどの原因になるから、という理由で、手術にあたって指輪は外す必要があります。

 

◆外れなかったらどうしよう?

指輪を外す方法はいくつかあります。

  • オイルや石鹸を使って滑りやすくして取る
  • 指をマッサージをしてむくみを取ってから取る
  • 指にたこ糸などを巻きつけて細くして取る
  • 指輪カッターで指輪を切る

4つ目はどう頑張っても外れなかった場合の最後の手段になりますが、切った指輪は購入店や専門店などに持ち込めば再びつなげる事ができます。指輪カッターは常備している施設が多いので、手術を受ける施設のスタッフにお問い合わせください。また、手術の内容によっては指輪を外さなくても手術可能な場合もあると思いますので、これも問い合わせてください。

指輪に限らず、アクセサリー類は手術の時に自分を傷つける原因になる場合があります。よっぽどの理由が無いのであれば必ず外しましょう!

執筆者

名原 史織

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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