病院で行われる検査の中に、細菌検査があります。血液、尿、痰などを調べて、病気の原因となっている菌の種類を推定するためのものです。大きく二種類に分かれ、塗抹(とまつ)検査と培養検査と呼ばれます。
◆ 塗抹検査とは?
尿や痰などの検体を濃縮、乾燥させて、顕微鏡で観察します。その際に細菌が見えやすくなるよう、特殊な染色液をかけて観察をします。染色液への染まり方や細菌の形から、大まかな菌の分類が分かりますので、それを元に菌の種類を推定することができます。一旦検査が始まってしまえば、数十分で終わる手軽な検査です。
手軽な検査ではありますが、顕微鏡の見た目だけから菌の種類を推定するには知識と経験が必要です。プロの臨床検査技師さんは、「細菌にもそれぞれ表情があるんだよ」と言いますが…。
種類が特定できない場合には、菌の大まかな見た目からひとまずの治療方針を決定し、より詳しい種類は培養検査で確認することが多いです。
◆ 培養検査とは?
培地の上に検体を塗り、細菌を増殖させます。塗抹検査では見つけられないくらい少量の細菌であっても増殖させれば確認ができますし、また菌が増えれば、より詳しい検査を行うことが可能です。細菌培養を行った後に、菌の種類を化学的に特定したり、抗菌薬に対する耐性を調べたりすることができます。通常は結果が出るまでに数日間から1週間ほどを要します。
◆ 何のために菌の種類を調べるの?
効果的な抗菌薬は菌ごとに異なるため、菌の種類を特定することでより効率の良い治療を行うことができます。また、中には何の病気か正確な診断がついていない場合もあり、検体中に菌がいるかどうか、またどんな種類の菌がいるか、などを調べることが、診断の手がかりとなることもあります。
このような検査を日々行っているため、医療者にとって菌は「病気を引き起こすもの」ではありますが、「汚いもの」という感覚はあまりないのかもしれません。顕微鏡を覗き込んで「いたいた!やっぱりこの菌だ」と興奮している姿は、端から見ているとただの変人に映るかもしれませんが、大事なことを調べているのです。
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※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。