日本人10万人の解析で、糖尿病と死亡率の関係が確認された

日本多目的コホート研究(JPHC study)は、全国11の保健所管内に住む地域住民を対象とした、生活習慣とがんなどの病気との関連についての長期追跡調査で、1990年より開始されています。このデータの解析で、糖尿病の人はどの程度死亡率が上がっていたのかが示されました。女性ですべての死因をあわせた死亡率が1.98倍になった、などの数字が出ています。
◆40才から69才までの約10万人を対象とした調査
著者らは以下の調査を行いました。
JPHC研究において1990年から2010年の間にデータ収集を行った。調査開始当時40才から69才まで、計46,017人の男性と53,567人の女性に関して行った。
JPHC研究では、生活習慣のアンケート調査、健康診断時の血液試料、検診データが集められました。このようにして得られたデータから、糖尿病と死亡率の関係を統計解析しました。
◆女性のほうが糖尿病による死亡リスクが増加する
著者らは以下の結果を得ました。
調査期間は中央値17.8年であり、この間8,223人の男性と4,640人の女性が死亡した。糖尿病は死亡リスクと相関 関係にあった(856人の男性と345人の女性が死亡、男性でハザード比1.60、95%信頼区間1.49から1.71、女性でハザード比1.98、95%信頼区間1.77から2.21)。
20年間の調査で開始時40才から69才までを対象としていますので、自ずと亡くなる人が出て来ます。今回の調査では男性が8,223人、女性が4,640人死亡しました。その中で糖尿病を患っていた方が、男性856人、女性345人でした。
糖尿病でなかった人よりも、男性で1.6倍、女性で1.98倍高い死亡確率でした。
死因ごとに分けて見ると、循環器系疾患などいくつかの死因について、糖尿病の方がその病気で亡くなる確率が高くなっていました。
著者らは「糖尿病は、特に循環器系疾患による死亡率を増加させる」と結論づけています。
人種や民族によっても違うと言われる糖尿病の影響が、日本人を対象にした大規模調査によって数字で示されたことには大きな意義があると思われます。
また、性差が報告されていることも目に付く点です。女性では循環器系疾患、または循環器疾患と
JPHC studyは20年間の追跡調査が終わり、現在は次世代多目的コホート研究(JPHC-NEXT)に受け継がれています。この様な地道な努力によって、今まで関連づけられなかった疾病の関係がしだいに明らかになっていくでしょう。
執筆者
Diagnosed diabetes and premature death among middle-aged Japanese: results from a large-scale population-based cohort study in Japan (JPHC study).
BMJ Open. 2015 May 3
[PMID: 25941187] http://bmjopen.bmj.com/content/5/4/e007736.full※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。