股関節骨折、早期退院は死亡リスクが増加する?

高齢者の骨折に代表的なものに大腿骨近位部骨折(大腿骨転子部骨折、大腿骨頚部骨折、大腿骨転子下骨折)があります。骨粗しょう症が多いことに加え、筋力低下、認知機能の低下により転倒しやすいことによって高齢者に起こりやすいと言われています。 今回、股関節骨折で入院期間が10日以内の場合、1日短くなるごとに死亡リスクが高まるという報告がされました。
◆股関節骨折患者116,111人を分析
2006~2012年の50歳以上の股関節骨折患者116,111人を対象に退院後30日間の死亡率と入院期間との関係を分析した。
◆10日以内の退院で死亡リスク上昇
股関節骨折患者の入院期間2006年は14.2日だったのに対し、2012年11.6日短くなっていました。
入院期間と退院後の死亡リスクを関係を解析したところ、10日以内で退院した場合において、退院が1日短くなるごとに死亡するリスクが上昇することが統計的に示されました。
ちなみにこの傾向は2006年だけでなく2012年においてもみられました。
対照的に、11日以上入院している患者の場合、入院期間が減っても死亡リスクに関係しないという結果を示しています。
研究チームは「股関節骨折で入院してから10日以内の早期退院は入院日数が短ければ短いほど、退院後の死亡リスク拡大と相関がある。この関係は経年同様の傾向として見受けられる。」と述べています。
現在、病院に入院することで廃用によるADL(日常生活動作)低下を防ぐために、早期に退院することが望まれています。
しかし、今回の研究結果は過度な早期退院によるリスクを示唆しています。
股関節骨折の入院時の治療計画を決める上で、参考になる研究内容かもしれません。
執筆者
Length of hospital stay after hip fracture and short term risk of death after discharge: a total cohort study in Sweden.
BMJ 2015
[PMID: 25700551]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。