2015.04.24 | ニュース

冠動脈疾患の診断、CT冠動脈造影(CTCA)でよりはっきりと

CTCA実施群で心筋梗塞の発症率が低下、ただし5%有意水準に満たず

from Lancet

冠動脈疾患の診断、CT冠動脈造影(CTCA)でよりはっきりとの写真

狭心症や心筋梗塞を含む冠動脈疾患(虚血性心疾患)は、命に関わることもある重大な病気です。診断方法のひとつに、CTを応用したCT冠動脈造影(CTCA)という新しい技術がありますが、その効果はまだ十分に確かめられていません。今回、イギリスの医療機関が協力して行った大規模な研究で、「冠動脈疾患の疑いがある患者にCTCAを使えば診断をより確かにできる」という結果が出ました。

◆4,146人が対象

対象になったのは、2010年から2014年にかけて、研究に参加したスコットランドの12の施設に冠動脈疾患の疑いで紹介された18歳から75歳の患者4,146人。

研究班は対象者を標準的な診療のグループと、標準的な診療に加えてCTCAを行うグループに1:1の割合で分け、CTCAによって診断が変わるかどうかを調べました。

 

◆診断がより明確になる傾向

対象者は最初の受診のとき、冠動脈疾患および、狭心症が「ある」「ありそう」「なさそう」「ない」という4段階の診断を受けました。

その後6週間以内にCTCAを行ったグループでは、冠動脈疾患の診断については27%が、狭心症の診断については23%が変わりました。標準的な診療のグループでは冠動脈疾患の診断、狭心症の診断について途中で変わったのはどちらも1%だけでした。

CTCAによって、最初に冠動脈疾患や狭心症の診断が「ありそう」「なさそう」であった人が「ある」「ない」と明確になり、かつ冠動脈疾患については「ある」「ありそう」と診断された人が増加しました。

この期間のうちに、CTCAを行ったグループのうち15%で検査の予定が変更され、23%で治療方針が変更されました。標準的な診療のグループでは検査予定の変更は1%、治療方針の変更は5%でした。

また1.7年後に心筋梗塞を起こした患者の割合は、CTCAを行ったグループと標準的な診療のグループで統計的に有意な差がありませんでしたが、CTCAを行ったグループのほうが38%少なくなっていました(p=0.0527)。

 

今回の研究では、CTCAが診断をより明確にすることと、検査及び治療方針に影響を与えることが報告されました。統計的に有意ではありませんが、CTCAが治療結果の向上に繋がる可能性が示されました。CTCAは新たな有効な検査として確立していくかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

CT coronary angiography in patients with suspected angina due to coronary heart disease (SCOT-HEART): an open-label, parallel-group, multicentre trial.,

Lancet., 2015 Mar 13

[PMID: 25788230]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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