ホスホマイシン系抗菌薬(内服薬・注射剤)
細菌の細胞壁を構成するペプチドグリカンという物質の生合成を初期段階で阻害することで抗菌作用をあらわす抗菌薬

ホスホマイシン系抗菌薬(内服薬・注射剤)の解説

ホスホマイシン系抗菌薬(内服薬・注射剤)の効果と作用機序

  • 細菌の細胞壁合成を初期段階で阻害することで抗菌作用をあらわす薬
    • 細胞壁という防御壁をもつ細菌はこれがないと生きることができない
    • ペプチドグリカンは細胞壁を構成する主要物質
    • 本剤は菌体内へ取り込まれた後、ペプチドグリカンの生合成を阻害する作用をあらわす
  • 嫌気的な条件下で感受性が良好で、特に腸管感染症に対して有効となる

ホスホマイシン系抗菌薬(内服薬・注射剤)の薬理作用

ホスホマイシンはその化学構造などにより、独自の作用機序を持ち、他の抗菌薬(抗生物質)と交差耐性がないとされている。

細胞壁をもつ細菌はこれがないと生存できないが、ホスホマイシンは細胞質膜の能動輸送系によって菌体内へ取り込まれた後、細胞壁を構成する主要物質であるペプチドグリカンの生合成を初期段階で阻害することにより、抗菌作用をあらわす。(同じく細胞壁への阻害作用をあらわす抗菌薬でも、ペニシリン系、セフェム系などのβラクタム系抗菌薬は細胞壁の生合成における最終段階に対して阻害作用をあらわす)

ホスホマイシンは比較的広い抗菌スペクトルを持ち、緑膿菌、プロテウス菌、セラチア菌、大腸菌、黄色ブドウ球菌などに活性を示す。また嫌気的な条件下では感受性が良好となり、特に腸管感染症に有効となる。

ホスホマイシン系抗菌薬(内服薬・注射剤)の主な副作用や注意点

  • 皮膚症状
    • 発疹、痒み、蕁麻疹などがあらわれる場合がある
  • 消化器症状
    • 下痢、吐き気、腹痛などがあらわれる場合がある
  • 肝機能障害
    • 頻度は稀だが、ASTやALTなどの上昇を伴う肝機能の異常がおこり、場合によっては黄疸などがあらわれる可能性もあり注意が必要
  • ホスホマイシンの注射製剤に関する注意
    • 成分(ホスホマイシンナトリウム)中にナトリウムを含むため、心不全腎不全、高血圧などの持病を持つ場合には特に注意が必要となる

ホスホマイシン系抗菌薬(内服薬・注射剤)の一般的な商品とその特徴

ホスミシン

  • ホスホマイシン製剤
  • 剤形に内服薬(錠剤、ドライシロップ剤)と注射剤(ホスミシンS)があり、用途などに合わせて選択される
    • 注射剤の成分(ホスホマイシンナトリウム)にはナトリウムを含むため、心不全腎不全、高血圧などの持病を持つ場合には特に注意が必要
  • ホスミシンには点耳薬(ホスミシンS耳科用)もあり、外耳炎や中耳炎などの治療に使われる