G-CSF製剤(顆粒球コロニー形成刺激因子製剤)
骨髄中の顆粒球系(特に好中球)の分化・増殖を促進する作用や好中球機能亢進作用、好中球に対する抗アポトーシス作用などをあらわすG-CSF(顆粒球コロニー形成刺激因子)の製剤で、がん化学療法などによって引き起こされる好中球減少症などに対して使われる薬

G-CSF製剤(顆粒球コロニー形成刺激因子製剤)の解説

G-CSF製剤(顆粒球コロニー形成刺激因子製剤)の効果と作用機序

  • 好中球を増やす作用などをあらわし、がん化学療法などによって起こる好中球減少症に対して使われるG-CSF(顆粒球コロニー形成刺激因子)の製剤
    • がん化学療法などによって引き起こされる発熱性好中球減少症(FN)は発熱を伴う好中球減少症で、時に重篤な感染症を引き起こす
    • G-CSFは骨髄中の顆粒球系(特に好中球)の分化・増殖を促進する作用をあらわす
    • 本剤はG-CSF製剤であり、好中球への機能亢進作用や抗アポトーシス作用などをあらわす
  • 製剤によっては、造血幹細胞移植時の好中球数の増加促進などに使われる場合もある

G-CSF製剤(顆粒球コロニー形成刺激因子製剤)の薬理作用

白血球の一つである好中球は侵入した細菌などの異物を局所にとどめて処理(殺菌)するため、細菌感染などに対して前線で働く生体防御となる。成熟好中球の寿命は非常に短く、通常であれば長くても2〜3日程度でアポトーシス(細胞の自然死)を引き起こす。抗がん剤などによって白血球などに分化する造血幹細胞が障害を受けると、成熟好中球が補完されないため好中球が減少していく。

発熱性好中球減少症(FN:Febrile Neutropenia)は、発熱を伴う好中球減少症で時に重篤な感染症を引き起こし死に至ることもある病態であり、特にがん化学療法においては注意すべき副作用の一つとなる。

G-CSF(Granulocyte Colony Stimulating Factor:顆粒球コロニー形成刺激因子)は、骨髄中の顆粒球系(特に好中球)の分化・増殖を促進する作用や好中球機能亢進作用、好中球に対する抗アポトーシス作用などをあらわし、好中球減少症に有効な物質の一つとなる。

G-CSF製剤の使用の是非はがんの種類や使う抗がん剤の種類、化学療法のレジメン(がん治療における薬剤の種類や量、期間、手順などの計画書)などによっても変わってくるが、発熱性好中球減少症の発症率が20%を上回る化学療法や高齢者などの場合にはガイドライン(G-CSF適正使用ガイドライン)などに準じて適切な投与が検討される。また本剤の中には造血幹細胞移植時の好中球数の増加促進や再生不良性貧血に伴う好中球減少症などに対して使われる製剤もある。

G-CSF製剤としては、フィルグラスチム(商品名:グラン®)、レノグラスチム(商品名:ノイトロジン®)といった製剤や、フィルグラスチムのバイオシミラー(バイオ後発品)の製剤がある。また2014年11月に発売されたペグフィルグラスチム(商品名:ジーラスタ®)は持続性が担保されたG-CSF製剤であり、フィルグラスチムにペグ(PEG:ポリエチレングリコール)という物質を結合させることで、従来のG-CSF製剤に比べ血中濃度半減期を延長させ「がん化学療法の1サイクルにつき1回の投与」を可能にしている。

G-CSF製剤(顆粒球コロニー形成刺激因子製剤)の主な副作用や注意点

  • 筋・骨格系症状
    • 背部痛、関節痛、筋肉痛、骨痛、四肢痛などがあらわれる場合がある
  • 皮膚症状
    • 発疹発赤、痒みなどがあらわれ、場合によっては発熱を伴う皮膚障害があらわれる可能性もある
  • 肝機能障害
    • ALTやASTの上昇などを伴う肝機能の異常があらわれる場合がある
  • 呼吸器症状
    • 頻度は稀だが、咳嗽、呼吸困難、口腔咽頭痛などがあらわれる場合がある
    • 息苦しい、咳や痰が出る、呼吸がはやくなる、脈がはやくなるなどの症状がみられる場合は放置せず、医師や薬剤師に連絡する
  • ショックアナフィラキシー
    • 頻度は非常に稀とされる
    • 皮膚の痒み、じんま疹、声のかすれ、息苦しさ、動悸、意識の混濁などの症状がみれれる場合には医師や薬剤師に連絡し、速やかに受診するなど適切に対処する

G-CSF製剤(顆粒球コロニー形成刺激因子製剤)の一般的な商品とその特徴

グラン

ノイトロジン

ジーラスタ

  • ペグフィルグラスチム製剤
    • フィルグラスチムにペグ(PEG:ポリエチレングリコール)を結合することで、従来のG-CSF製剤に比べ持続性が担保されている
    • 主にがん化学療法による発熱性好中球減少症発症を抑える目的で使われる